「本書は、五二歳のぼくから二七歳のぼくに宛てた長い手紙でもある。」
『存在論的、郵便的』から25年。四半世紀越しの問いが、いま解かれる。
2023年9月1日、批評家・作家の東浩紀さんの新著『訂正可能性の哲学』(ゲンロン)が発売される。
本書は2017年に刊行され、毎日出版文化賞を受賞した『ゲンロン0 観光客の哲学』(ゲンロン)の続編となるもので、「正しさ」でがんじがらめになった時代に、誤ることの意味を問いかける内容となっているという。
第1部「家族と訂正可能性」では、ウィトゲンシュタインやクリプキ、トッドといった思想家の仕事をヒントに、前作にも登場した「家族」という言葉の持つポテンシャルを考える。メンバーが変わっても「同じ家族」であるのはなぜか。子どもの遊びにも似たこの特徴をモデルに、「訂正可能」なゆるい連帯の姿を描き出す。
「一般意志再考」と題された第2部では「訂正可能性」をキーワードに、新しい民主主義のあり方を考える。いま世の中を覆う、政治を人工知能に委ねるべきだという思想は、じつは民主主義の祖であるルソーの「一般意志」までまっすぐ繋がっている。人間がビッグデータに分解され、さらにAIにとって代わられるなかで、それでも人間になにができるのか。
また、書き下ろしの第8章・第9章では、ルソー自身の小説『新エロイーズ』やドストエフスキーの『地下室の手記』を読み解くことで、個々の「私」を排除しない「新しい一般意志」の可能性を掬い上げている。
本書には上で出た以外にも、プラトン、ポパー、アーレント、トクヴィル、ユヴァル・ノア・ハラリ、落合陽一、成田悠輔など、古今東西の思想家が登場する。一見、難解な哲学書のようにも見えるが、「人々をつなげるはずのSNSが社会を引き裂くいま、分断を乗り越える対話はどうすれば可能なのか」という、私たちの生活に根ざした問いに対する答えも提出されているという。
また、著者は10月に朝日新聞出版より新書『訂正する力』を刊行予定。聞き手・構成を辻田真佐憲さんが務め、政治や文化を話題にしながら「訂正可能性」をより分かりやすく語る、『訂正可能性の哲学』とセットで読みたい内容となっている。
【目次】
第1部 家族と訂正可能性
第1章 家族的なものとその敵
第2章 訂正可能性の共同体
第3章 家族と観光客
第4章 持続する公共性へ
------------------------
第2部 一般意志再考
第5章 人工知能民主主義の誕生
第6章 一般意志という謎
第7章 ビッグデータと「私」の問題
第8章 自然と訂正可能性
第9章 対話、結社、民主主義
------------------------
おわりに
文献一覧
索引
■東浩紀さんプロフィール
あずま・ひろき/1971年東京生まれ。批評家・作家・哲学者。株式会社ゲンロン創業者。東京工業大学特任教授、早稲田大学教授など歴任。著書に『存在論的、郵便的』(1998年、第21回サントリー学芸賞 思想・歴史部門)、『動物化するポストモダン』(2001年)、『クォンタム・ファミリーズ』(2009年、第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』(2011年)、『観光客の哲学』(2017年、第71回毎日出版文化賞 人文・社会部門)、『ゆるく考える』(2019年)、『テーマパーク化する地球』(2019年)、『ゲンロン戦記』(2020年)、『忘却にあらがう』(2022年)ほか多数。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?