一枚の不思議な「絵」の謎を追い、令和から昭和、大正へ。
戦争が引き起こした家族の亀裂は、現代を生きる人びとにも影を落としていた――。
2023年8月16日、作家・加藤シゲアキさんの書き下ろし長編小説『なれのはて』(講談社)の情報が解禁された。原稿用紙740枚超の大作で、10月25日に発売される。
舞台は、東京、秋田、新潟。そして時代も令和から、戦前戦後の昭和、そして大正までを描く。物語のきっかけになるのは、終戦前夜に起きた日本最後の空襲といわれる、秋田・土崎空襲。これは秋田にルーツのある加藤さんが温め続けてきたテーマだという。
1万字のプロットから、約3年をかけて作り上げた大作。やるせない人間の業(ごう)と向きあいつつ、一方で力強く生き抜こうとする人びとの姿を、一枚の絵のミステリを通じて伝える書き下ろし巨編となっている。
刊行を記念して9月22日発売「小説現代」10月号では「加藤シゲアキの現在地(仮)」を大特集。書籍発売より一足先に『なれのはて』が読める「全文公開」や本人のロングインタビュー、そして舞台の地・秋田でのグラビアなど最新刊をより楽しめる特集が予定されている。
<あらすじ>
ある事件をきっかけに報道局からイベント事業部に異動することになったテレビ局員、守谷京斗(もりや・きょうと)。異動先で出会った吾妻李久美(あづま・りくみ)が祖母から譲り受けた、作者不明の不思議な古い絵を使って「たった一枚の展覧会」を実施しようと試みる。ところが、許可を得ようにも作者も権利継承者もわからない。手がかりは絵の裏に書かれた「イサム・イノマタ」の署名だけ。守谷は元記者としての知見を活かし、謎の画家の正体を探り始める。だがそれは、秋田のある一族が、暗い水の中に沈めた秘密に繫がっていた。
1945年8月15日未明の秋田・土崎空襲。
芸術が招いた、意図しない悲劇。
暴走した正義と、取り返しのつかない後悔。
長年秘められてきた真実は、一枚の「絵」のミステリから始まっていた。
戦争、家族、仕事、芸術......すべてを詰め込んだ作家・加藤シゲアキ「第二章」のスタートを彩る集大成的作品。
「死んだら、なにかの熱になれる。すべての生き物のなれのはてだ」
<加藤シゲアキさん コメント>
前作『オルタネート』の執筆時から考えていた本作が、構想からおよそ3年の歳月を経てついに完成しました。■加藤シゲアキさんプロフィール
かとう・しげあき/1987年生まれ、大阪府出身。青山学院大学法学部卒業。2012年1月『ピンクとグレー』で作家デビュー。2021年『オルタネート』で第42回吉川英治文学新人賞、第8回高校生直木賞を受賞。「NEWS」のメンバーとして活躍しながら作家としても精力的な活動を続けており、評価を高めている。他の著書に『閃光スクランブル』『Burn.−バーン−』『傘をもたない蟻たちは』『チュベローズで待ってるAGE22・AGE32』(全2冊)、エッセイ集に『できることならスティードで』がある。
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