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日本で「40℃超えの酷暑」が当たり前になったら、ヒトは生きていけるのか

40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか

 この夏も、全国的に最高気温35℃以上の猛暑日が続いている。「日本一暑い街」埼玉県熊谷市では最高気温38℃の日も。さらに温暖化が進めば、40℃超えが普通になる時代も来てしまうかもしれない。

 そんな日本で私たちは生きていけるのだろうか? 生理学研究者の永島計さんがこの問いに挑んだ『40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか 体温の科学から学ぶ猛暑のサバイバル術』(化学同人)の文庫版が発売された。単行本版が出た2019年には「かなり大げさ」にタイトルをつけたそうだが、2022年には各地で40℃超えを記録するなど、今や現実として迫ってきている。

55℃でも生きている人がいる

 40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか。永島さんの答えは「イエス」だ。

 たとえば、アフリカ大陸のチュニジアにある、約15万人が暮らすケビリ県は、7、8月の平均最高気温が42℃ほどだそうだ。典型的な砂漠地域の気候で、最低気温が20℃ほどなのでまだなんとかなりそうだが、歴代の最高気温はなんと55℃。この暑さになったら、いったいどう過ごしているのだろうか。

 反対に、500人ほどが暮らすロシアのオイミャコンの12、1月の平均気温は、マイナス50℃ほど。ケビリ県でもオイミャコンでも人が生きていけているということは、40℃超えの日本列島でも暮らしていけるということになる。

 しかし、人体が気温の変化に強いかというとそうではない。本書によると、生きている人の体温の変化の許容範囲は、大きく見積もっても10℃以内だそう。気温だと1℃の違いは小さく思えても、体温に置き換えるとかなりの変化になるのだ。ではなぜ人は暑すぎる環境でも寒すぎる環境でも暮らせているのか。

 暑さや寒さに至る広範囲の極限環境で人が生存し、生活していけるのは、人が持つ知能と技術に尽きるといえる。そして残りのわずかが、われわれの持つ肉体の生命力である。

 永島さんいわく、人は他の動物よりも自分の体温を適切に保つ能力がすぐれているのだそう。本書は、まずそもそも「体温」とは何か、そして人の体にそなわっている体温調節のメカニズムを解説している。さらに、酷暑を乗り切るために知りたい熱中症の症状と対策も学術的にまとめられている。

 気温が40℃にもなると、体温調節が破綻し熱中症になるリスクが高まるが、永島さんは「原因解決の手立ては明確にあり、少なくとも熱中症で死ぬことを壊滅できると私は思っている」と語っている。この夏、暑くてもう死にそう! と思っても、本書を読めば乗り切る知恵と自信が得られるはずだ。

【目次】
はじめに
第1章 環境と人の関係
第2章 カラダの温度とその意味
第3章 カラダを冷やす道具たち
第4章 温度を感じるしくみ
第5章 脳と体温調節──考えない脳の働き
第6章 フィールドの動物から暑さ対策を学ぶ
第7章 熱中症の話
第8章 運動と体温
第9章 発達、老化、性差など
第10章 温度や暑さにかかわる分子や遺伝子
おわりに 40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか

■永島計さんプロフィール
ながしま・けい/1960年宝塚市生まれ。85年京都府立医科大学医学部医学科卒、95年京都府立医科大学大学院医学研究科(生理系)修了。京都府立医科大学附属病院研修医、イエール大学医学部ピアス研究所ポスドク研究員、王立ノースショア病院オーバーシーフェローなどを経て、現在、早稲田大学人間科学学術院教授。博士(医学)。専門は生理学、とくに体温・体液の調節機構の解明。



    
  • 書名 40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか
  • サブタイトル体温の科学から学ぶ猛暑のサバイバル術
  • 監修・編集・著者名永島 計 著
  • 出版社名化学同人
  • 出版年月日2023年7月10日
  • 定価990円(税込)
  • 判型・ページ数文庫判 ・200ページ
  • ISBN9784759825145

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