神奈川県横須賀市小原台にある、防衛大学校。自衛隊のエリートを育てるその場所は、学生たちに「小原台刑務所」と呼ばれる魔境だった......。
「防大→陸自→流浪の民」の経歴を持ち、防大と自衛隊での経験をユーモアたっぷりに紹介して人気を集めているぱやぱやくんさんの最新刊『今日も小原台で叫んでいます 残されたジャングル、防衛大学校』(KADOKAWA)が、2023年7月28日(金)に発売された。
本書の内容はぱやぱやくんさん在校時の経験にもとづいており、現在の防大とは異なる点もあるかもしれないそう。防大は学費・衣食住が無料で、月に約12万円の手当と年2回の期末手当がもらえる。しかしそのぶん「国税を無駄にするな」という意識があり、あらゆるルールが非常に厳しかったという。
防大では○年生・○回生ではなく「○学年」と呼ばれていて、1部屋に1~4学年混合の8名前後が共同生活をする。1学年には「対番学生」という指南役の2学年が1人ずつ付き、制服のプレス(アイロンがけ)や靴磨き、ベッドメイキングなどを教えてもらうのだが、ぱやぱやくんさんいわく「同期と対番学生以外は全て敵」。四方八方の上級生が下級生の手抜かりを厳しく見とがめ、指導してくる。1学年は朝から晩まで走り回り、力の限り大声を出すことになる。さらにテレビやゲーム機の所持が禁止で、娯楽がほとんどない。
進学よりも「出家」に近い学校であり、一般社会を娑婆(しゃば)と感じることさえあります。
防大生たちの1日は、朝6時の起床ラッパが鳴った瞬間にベッドから飛び起き、窓やドアを開けて「おはようございます!!」と絶叫するところから始まる。それから5分以内に集合して乾布摩擦をした後、1学年は2学年の監督のもと清掃をする。この清掃も、とにかくスピードと正確さが求められる「エクストリームスポーツ」なのだという。
もっと余裕がないのは夕方だ。校友会(参加必須のサークル活動)が18時に終わり、19時20分には点呼がある。この1時間20分の間で入浴・食事・清掃などを済まさなければならない。そのうえ1学年は、この時間に制服のプレス・ベッドメイキング・報告書作成なども行うため、「入浴5分、食事5分」。移動は常にダッシュだ。
点呼前の清掃を終え、プレスされた服に着替えるため自室に戻ると、なんと「99%の確率でベッドが飛ばされて」いるという。「ベッドメイキングが汚い」という指導だそうだが、マットレスがひっくり返り、枕は行方不明に。枕を探し出して1分でベッドメイキングし直し、1分で着替えて点呼へ向かう。
このような過酷な毎日を送りながら、学生たちは訓練や勉学に励む。訓練は、射撃・遠泳・20kmの徒歩行進など。体力がいくらあっても足りなさそうだ。座学も一般の大学以上にあるが、教場は上下関係を気にしなくてもよく、「非武装地帯」と呼ばれているのだそうだ。
あまりに過酷な環境のせいで、4月1日の「着校日」から5日の「入校式」までに100人ほどがいなくなることも珍しくないそう。しかし一度馴染んでしまえば、個性が強すぎる学生たちや、謎のコント大会、一大イベント「棒倒し」など、防大でしか味わえない青春が待っている。防大志望の読者にとっては、体験入学がわりの一冊になるのではないだろうか。
【目次】
はじめに ――現代に残されたジャングル、防衛大学校の世界へようこそ
第1章 防大ワールドへようこそ
第2章 1学年はつらいよ
第3章 限界に挑む訓練と行事
第4章 防大最大の合戦、棒倒し
第5章 楽しい防大生活
第6章 防大の勉学事情
第7章 防大生と異文化交流
第8章 楽園の終わり
おわりに ――人生が一度しかないのなら、防大へ行くのもまた一興
■ぱやぱやくんさんプロフィール
防衛大学校卒の元陸上自衛官。退職後は会社員を経て、現在はエッセイストとして活躍中。名前の由来は、自衛隊時代に教官からよく言われた「お前らはいつもぱやぱやして!」という叱咤激励に由来する。
Twitter:@paya_paya_kun
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?