老後の不安の筆頭とも言えるお金の問題。退職したら、爪に火を点すような生活が待っているかと思うと心配になる。交際費や趣味に使うお金は削らなくちゃ......。そう考えている方も多いのでは。
ところが、精神科医で『80歳の壁』など数々のベストセラーの著者である和田秀樹さんは、「お金を使って幸せになる」ことを勧めている。
和田秀樹さんの新刊『わたしの100歳地図』(主婦の友社)は、高齢者医療に携わってきた和田さんが、60代、70代、80代、それ以降と、各年代を追いながら人生100年時代を展望する「設計図」だ。
ただ長生きするだけでなく、幸せに生きていくために必要な考え方を、お金や時間の使い方など豊富な視点から提言する。
第1章「60歳からの地図 ~第二の人生のスタートはまだまだ先」では、現在63歳の和田さんが、医師として多くの高齢者に接してきた経験から、60代という10年間に意識すべきことなどを述べている。
その一つが、「お金を使って幸せになる経験を開拓する」こと。
「年を重ねれば重ねるほど、お金をもっている人よりもお金を使っている人に、人が寄ってくるようになります」
たとえば、お金持ちだけれどお年玉を1000円しかくれないおじいちゃんと、貧乏だけれどなけなしの1万円をくれるおばあちゃんがいたとすれば、孫はもちろん後者をより慕ってくれるだろう。
和田さんいわく、ケチだと疎まれるより孫に感謝されて、一緒に楽しい時間を共有したほうがよほど幸せだ。このように、60代では、幸せになる経験へと積極的にお金を使いたい。
少子高齢化が進んでいることなどから、年金問題で財政が破綻するというニュースを耳にするが、和田さんは「受け取った年金を高齢者が全部使ってくれれば、むしろ経済効果は高い」と主張する。
本書に掲載されている、2019年末の数字では、日本の年金受給権者は4040万人で、年間の総支給額は52兆9607億円にもなる。仮にこれらの年金がすべて使われるとすれば、日本の経済を回す大きな力となるだろう。
「貯蓄したり、買いたいものを買わずに我慢したりして、お金を使うことに頭を使わないと、脳の老化につながる」
たとえば、NHKや民放のテレビ番組がつまらないと感じたときは、Amazon PrimeやNetflixの有料動画配信サービスに加入するのも、和田さんがおすすめしているお金の使い方の1つだ。なんとなくいつものテレビ番組を流しているよりも、自分が本当に好きな映画やドラマを鑑賞するほうが、より有意義なお金の使い方といえる。月に500円から2000円ほど払えば、いつでも対象の映画や流行っている番組を好きなだけ見られるのはコスパがいい。
もう1つ、60代の人生を歩む上で大切にしたいのが、「自分が心地良いと思うことだけを追求する」こと。
和田さんは自身について、学生時代はどちらかというと落ちこぼれで、周りからうらやましいと思われるような人生ではなかったと振り返る。けれど最近になり、高校や大学の同級生たちから、自由に生きている姿をうらやましいと言われるようになったのだそう。
「肩書や社会的地位よりも、自分のやりたいことをやる、イヤなことはできるかぎりしないということを徹底してきたおかげです」
世間からの評価や他人との比較ではなく、自分にとって心地よいと思うかどうか。よく言われることではあるが、行動に移すのは非常に難しくもある。まずは、貯めていたお金の使い道を、自分にとって心地よい体験に使うことへシフトしていくことから始めてみては。
■和田秀樹さんプロフィール
わだ・ひでき//1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、三十年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』『70歳の正解』『マスクを外す日のために』『感情バカ』『バカとは何か』(すべて幻冬舎新書)など著書多数。
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