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「助けて」が言えなくて。38383件の被害者の声から分かった性暴力のメカニズム

「助けて」と言える社会へ

   コロナの影響でバイト先をクビになり、大学の奨学金返済や生活のため、マッチングアプリで知り合った男性にお金で性行為を強要されて、応じざるを得なかった10代の女性がいる。

「生活のためだったが、あんなことしなければ良かったと、自分を責め続けていて苦しい。」

   一方、夫がリモートワークで自宅にいるようになり、暴言や暴力を振るわれるようになった30代の女性は......。

「赤ちゃんが泣いていても、酔った勢いでおかまいなしに性行為を要求してくる。死んだら楽になるんじゃないかと、赤ちゃんと一緒に死んでしまいたくなる。」

   そして、夫の会社が潰れそうで、自身はパートで働いているものの、勤務先のオーナーにシフトを優先的に入れる代わりにと性行為を強要されたという女性も。

「どこにも居場所がない。どうすればいいかわからない。もう限界。」

   これらは、コロナ禍で生活が立ち行かなくなり、性暴力の被害に遭っている女性たちの悲痛な心の叫びだ。

   性暴力や不平等をなくすために何ができるのか。女性キャリア研究の専門家が問題と提言をまとめた書籍『「助けて」と言える社会へ 性暴力と男女不平等社会』(西日本出版社)が発売された。

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   著者は、長年にわたり非正規・ワーキングプア・ワークライフバランスなどの研究に取り組んできた、日本女子大学名誉教授の大沢真知子さん。現場取材や研究プロジェクトなどから明らかになった問題をまとめていく。

   大沢さんが本書を書いたきっかけは、NHKの性暴力に関するアンケート調査の分析に携わったことだった。そのアンケートには、38383件もの被害者の声が寄せられ、そのすべてに被害を受けた時の辛い経験が詰まっていた。そしてその声は、大沢さん自身が封印してきた過去の記憶も呼び覚ましたという。

   本書では、コロナ禍で追い込まれた女性たちの実態から、性暴力被害者へのアンケート調査で見えてきたこと、さらには職場や就活の際のセクハラ、幼少期の被害が与える影響など、女性を取り巻く問題を紹介しながら、性暴力が生じるメカニズムを解明していく。

   本書の目次は以下の通り。

はじめに
第1章 追い込まれる女性たち
1 女性を直撃したコロナ禍-DVとその実態
2 ドメスティックバイオレンス(DV)とは何か
3 コロナ下で増加するDV相談と「DV相談プラス」
4 DV被害者の支援
第2章 性暴力被害者支援のために
1 「性暴力救援センター 日赤なごやなごみ」の設立
2 長江美代子さんのお話
3 片岡笑美子さんのお話
4 なごみの活動からわかったこと
5 女性のための女性による相談会
6 共依存という問題
第3章 三万八三八三件の被害者から見えてきた性暴力の実態
1 性暴力とは何か
2 ある性被害者の証言
3 アンケート調査の結果から見えてきたこと
4 刑法の改正と今後
5 強姦神話と不十分な被害者への支援
6 声を上げた被害者たちによって変化が始まっている
第4章 職場における性暴力
1 セクシャル・ハラスメントの規制
2 増える就活セクハラ
3 実態調査の結果から見えてきたこと
4 NHKのアンケート調査の結果から見えたこと
5 男性の被害者の経験から見えてくるもの
6 セクハラは男性問題
第5章 男女不平等社会とDV・性暴力
1 平成は失われた時代だったのか
2 コロナ渦が浮き彫りにした男女不平等社会日本
3 性被害による社会的・経済的損失
4 幼少期の被害がその後に与える深刻な影響
5 「助けて」と言える社会へ
あとがき
参考文献
付録 相談先一覧

   帯には、作家の井上荒野さんが、「知らなければ怒ることはできない。本書を読んで、すべての人に、怒ってほしい。」と推薦のコメントを寄せている。

   「助けて」と言える社会になるために、私たち一人ひとりに何ができるのかを考えさせられる一冊。

■大沢 真知子さんプロフィール
おおさわ・まちこ/日本女子大学名誉教授。専門は労働経済学、女性キャリア研究。日本ペンクラブ女性作家委員会委員。東京都女性活躍推進会議専門委員。南イリノイ大学経済学部博士課程修了。Ph. D(経済学)。コロンビア大学社会科学センター研究員。シカゴ大学ヒューレット・フェロー、ミシガン大学ディアボーン校助教授、亜細亜大学助教授・教授を経て日本女子大学人間社会学部現代社会学科教授。
主な著書は『ワークライフバランス社会へ』(岩波書店、2006)『ワークライフシナジー』(岩波書店、2008)『ワーキングプアの本質』(岩波書店、2010)『妻が再就職するとき―セカンドチャンス社会へ』(NTT 出版、2012)『女性はなぜ活躍できないのか』(東洋経済新報社、2015)『なぜ女性は仕事を辞めるのか』共編著(青弓社、2015) 『21 世紀の女性と仕事(放送大学叢書)』(左右社、2018)『なぜ女性管理職は少ないのか―女性の昇進を妨げる要因を考える』共編著(青弓社、2019)等多数。


※画像提供:西日本出版社


  • 書名 「助けて」と言える社会へ
  • サブタイトル性暴力と男女不平等社会
  • 監修・編集・著者名大沢 真知子 著
  • 出版社名西日本出版社
  • 出版年月日2023年5月31日
  • 定価1980円(税込)
  • 判型・ページ数四六判、248ページ
  • ISBN9784908443800

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