モヤモヤイライラ、感情に振り回されてストレスが溜まる......周りに迷惑をかけずに解消するには? 精神科医の保坂隆さんが、著書『精神科医が教えるこじらせない心の休ませ方』(大和書房)でその対処法を教えてくれている。
今回ご紹介するのは、「第6章 自分を粗末にしない」から、自分の感情とうまく付き合う方法だ。
心の中ではモヤモヤしたりカッとなったりするけれど、周りに迷惑がかかるから表に出さずに我慢しているという人も多いのでは。日本では特に、「感情を人前であらわにしない」ことが美徳とされがちだ。
しかし、感情を隠していると「心身の健康にかなり大きな影響が出る」と研究でわかっているそう。具体的には、ハーバード公衆衛生大学院とロチェスター大学の研究が紹介されている。感情を抑え込んでいると、早期死亡の可能性が30%、さらにガンと診断されるリスクが70%も増加するのだそうだ。
我慢しても、その感情がなくなるわけではない。感情を表に出さないのは「対処しない」のと同じなのだ。健康を害するくらいなら、喜怒哀楽を素直に表に出したほうがいいかもしれない。しかし、仕事の場など、どうしても表に出せないシーンもある。そんなときはどうすればいいのだろうか?
保坂さんいわく、「自分がいま感じている感情を認め、原因を特定して心の中で説明する」ことが、口に出すのと同じくらいのストレス発散になるそうだ。たとえば、仕事でうまくいかず落ち込んでいるときに「私はいま悲しい。頑張って準備したものが白紙になったのだから、そう感じて当然だ」というように、心の中で整理するといい。
最近、増えているのが「カッとなりやすくて困っている」という相談だ。感情のままに行動すれば、トラブルにつながるかもしれない。どう対処すればよいのだろうか。
保坂さんのアドバイスは、「カッとしたらすぐにその場を離れ、トイレの個室へ駆け込んで深呼吸してください」。そんな単純なこと? と思うかもしれないが、これには医学的な根拠がある。
怒りは、脳の中の「大脳辺縁系」という部位で起こる。ここは動物も持っている原始的な部位で、反応が素早い。一方、怒りを抑えるのは、知能や理性をつかさどる前頭葉。ここは構造が複雑で、立ち上がりに時間がかかる。
そこで、トイレに行くことで前頭葉がしっかり働き出すまでの時間を稼ぐのだ。さらに、深呼吸をすると脳に大量の酸素が送られ、前頭葉の働きを活性化させることができる。
もちろん、怒りの対象から物理的に離れるという面でも気持ちが落ち着く。加えて、狭い空間に安心感を覚えるという効果もある。この「トイレ逃避法」は、怒りだけでなく「苦しい」「つらい」「悲しい」「不安」といった感情にも対処できるそう。感情がコントロールできなくなったとき、ぜひ試してみてほしい。
『精神科医が教えるこじらせない心の休ませ方』では、心がラクになる対処法をほかにもたくさん紹介している。次回は、クヨクヨしなくなる考え方のコツをお伝えする。
■保坂隆さんプロフィール
ほさか・たかし/保坂サイコオンコロジー・クリニック院長。1952年、山梨県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学医学部精神神経科入局。東海大学医学部教授、聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授を経て、現職。著書に『精神科医が教える50歳からの人生を楽しむ老後術』『精神科医が教える50歳からのお金がなくても平気な老後術』『精神科医が教える60歳からの人生を楽しむ孤独力』『精神科医が教えるすりへらない心のつくり方』がある。
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