不登校について、最近では「無理して学校に行かせなくていい」という意見が目立つ。とはいえ「我が子を信じて待つ」とは、言うは易しでなかなか難しい。出口の見えないトンネルに入ってしまったようで、親としては心配が尽きない。
「ゲームばかりしていて将来についてどう考えているのかわからない」「復学どころか親子のコミュニケーションさえもできなくなってしまった」「こうなってしまったのは私の育て方が悪かったせいだ」......そんな悩みを抱えた保護者に向けて、1万人を解決に導いたカウンセラー・今野陽悦さんが、親が子どもの居場所になるための方法を提案しているのが、『学校に行けない子どもの気持ちがわかる本』(ウェブ出版)だ。
実際に不登校・引きこもりを経験した今野さんが、子どもの立場に寄り添った解決の方法を、優しい語り口で説く。「復学だけをめざさない解決メソッド」として、親が心を落ち着けるためのワークや、子どもの心に寄り添う5つのステップなど、具体的な方法が豊富に紹介されている。
ここでは、第1章「あなたは悪くありません」から、子どもと安定した関係を築くために欠かせない、親の心を落ち着かせ、親自身がありのままを受け容れられるようになるワークの進め方を見ていこう。
今野さんは、数多くの不登校の子どもの悩みに直面してきた経験から、彼らには学校や家のような物理的な居場所だけではなく、心の居場所も必要だと言う。「心の居場所」とは、子どもが「ありのままの自分でいられる」場所だ。
そのためには、保護者が子どもの「心の居場所」になれるようなマインドを持つこと、すなわち「受容的」になることが大切だという。
「親御さんが自分のありのままを受け容れられるようになると、それと比例するかのように子どものありのままも受け容れられるようになってきます。親が子どもを受け容れられるようになると、その影響から子どもも、自分自身を受け容れられるようになってきます」
親が自分自身のありのままを受け容れる方法として、本書で紹介されているうちの1つが、紙1枚だけですぐに実践できる「自分をねぎらう」ワーク。自分に対するネガティブな感情を認識するものだ。
1枚の紙を用意し、「自己否定の声」「その結果の行動」「自分をねぎらう・慰める言葉」を書き出す。本書に掲載されているのが、以下の例だ。
自己否定の声
1.子どもが学校へ行けないなんて、母親失格だ
2.ママ友や親戚などに相談できない
その結果の行動
1.無理やり学校へ行かせようとしてしまう
2.人の目が気になってビクビクしてしまう
自分をねぎらう・慰める言葉
1.「そうだよね、子どもが学校に行けなかったらダメな親だと思っちゃうよね。でも、これまで子どもを愛して、大事に育ててきたじゃない。だからこそ、そんなふうに思っちゃうんだよね」
2.「まわりの人たちって、みんな悩みがなさそうで順風満帆そうに見えるものだよね。『私のことなんてわかってもらえない』と思うと、なかなか堂々とはできないよね」
このように、親自身が自分を癒すことで心の安全基地が強くなり、自分にエネルギーを与えられるようになると今野さんは説く。そうして自己受容を深めれば、「私は私」と思えると同時に「人は人」と認められるため、「人には人の考えがある」ということも受け容れられるようになるのだという。このマインドは、子どもと向き合いコミュニケーションをとっていく上で必要なものだ。
「お子さんを自分とは違うひとりの人間だと認識でき、その考え方を尊重できるようになるとともに、我が子の未来も信じられるようになっていくことでしょう」
本書は、親の気持ちに寄り添う今野さんのやわらかな語り口や、手に取りやすい優しいイラストの表紙も相まって、出口の見えない不安を落ちつかせてくれる。一体どうすればいいのかわからない、そんな気持ちでいっぱいになっているとき、今野さんのメッセージは大きな助けになるはずだ。
目次は以下の通り。
第1章 あなたは悪くありません
第2章 子どものケアをするときの基本
第3章 集団タイプ・個人タイプの子どもたち
第4章 不登校解決までのステップ
第5章 よくある質問
■今野陽悦さんプロフィール
こんの・ようえつ/不登校・引きこもり専門カウンセラー。10代の頃に不登校や引きこもりを経験し、カウンセリングを受講しながら、自身もカウンセリングや心理学を学ぶ。かつての自分と同じように悩んでいる人の力になりたいと、自身の経験を通じて、20歳の頃から不登校・引きこもりなど子どもの問題を専門としたカウンセラーとして活動を開始。子どもの気持ちに寄り添い、一緒に解決していくカウンセリングスタイルが話題となり、のべ1万件を超えるカウンセリングを行う。無料メールマガジン「不登校・引きこもりのお子さんを持つ親御さんのための親子関係講座」の購読数は約7万人。
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