「人生100年時代」という言葉をよく聞くようになった。そうなると、50歳はまだまだ折り返し地点。残り半分の人生をいっそう充実したものにするためには、何をすればよいのだろう。健康、お金、友だち......欲しいものを手に入れるには?
昨年、著書『80歳の壁』(幻冬舎)が年間ベストセラー1位を獲得した医師の和田秀樹さんは、50歳になったら「勉強」することを勧めている。
2023年2月17日に発売された和田さんの新著『五〇歳からの勉強法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)では、英語学習法にスピーチ練習法など、50歳以降ならではの強みを生かした勉強法を幅広く紹介した1冊。75歳くらいまでは低下しないとされる知的能力や、それを磨く具体的なやり方について分かりやすく解説している。
今回は本書から、なぜ50歳からの勉強が必要なのか、そして何をどのように学べばいいのか、和田さんのアドバイスを紹介したい。
和田さんが50歳こそ勉強が必要と強調する理由は、50歳前後から、「認知的成熟度」が退行しがちだからだという。
これは、「白と黒の間にグレーをいくつ認められるか」という能力。1つのことに対して答えは1つに決めつけず、いくつの答えを考えられるかという能力のことだ。これが衰えてしまうと、何でも白黒はっきりさせないと気が済まなくなってくるのだとか。
「自分の経験ではこうだったから私の意見は絶対正しい」などと信じ込んでしまい、反対意見に耳を貸そうとしなくなるのだという。
「わたしたちは、ともすれば『経験則の罠』にはまりやすいからである。社会経験を積むうちに、世の中の複雑さを知る一方で、試行錯誤の末にうまくいった方法を得ると、これが正解だと思い込むようになっていくのである」
このように、思い込みで物事を決めつけてしまう状態を解消してくれるものこそが、50代からの大人の勉強なのだ。
「大人の勉強というのは、ひとつの真理や真相を追究して、ひとつの答えにたどりつくことでなく、いろいろな説があること、いろいろな可能性があることを知るためにするものだ」
自分の経験にこだわって、そこからしか話せないよりも、広い視野で「こういう考え方もある」と柔軟に考えられる人のほうが、より魅力的な大人に見えるのは間違いないだろう。
さて、いざ勉強にとりかかろうとするとき、重要となるのが「自分の好きなことを勉強すること」、そして「アウトプット」を前提にすることだ。
和田さんは、ゆとり教育などを経ている若者よりも50代の人のほうがはるかに勉強の習慣があり勉強好きな人が多いと述べた上で、1つの問題点をあげている。
それは、勉強すること自体が目的化してしまう人が多い点だ。本来、勉強とは何らかの形でアウトプットするためのもののはず。それに向けてインプットしていくことで、最初から整理された状態で効率よく情報を収集できるのだという。記憶が定着しやすいというメリットもある。
本書では、「今はネット上で誰でも発信できる時代」であるとして、たとえばツイッターや個人ブログ、YouTubeなどの場で発信してみることを勧めている。
まずは、何かの役に立ちそうなこと、需要がありそうなことよりも、自分が心から興味を持てるもの。そんな分野を思い出してみよう。学んだ知識をネット上で公開することを目標に勉強を始めてみれば、知らなかった世界が広がっていくかもしれない。
■和田秀樹さんプロフィール
わだ・ひでき/1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、三十年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』『70歳の正解』『マスクを外す日のために』『感情バカ』『バカとは何か』(すべて幻冬舎新書)など著書多数。
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