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「子育てしながらミニマリスト」ってどう実現する? 人気ミニマル系ブランドデザイナーに聞く。

「大好きなもの」しか持たない 少ない暮らし

 ものに溢れた暮らしが窮屈で、「ミニマリスト」に憧れる人も多いのでは。

 とはいえ、子育てをしていると、子ども関連のグッズが増え続けるうえ、片付けたそばから散らかされるので、ミニマリストへの道は険しい。そこで今回は、YouTubeやInstagramで人気の7人のミニマリストが、それぞれの暮らしを語った『「大好きなもの」しか持たない 少ない暮らし』(日本文芸社)から、2LDKに、2人の子どもと3人で暮らしているミニマリストの例を紹介しよう。

 本書に登場する7人に共通しているのは、「自分にとって本当に大切なものを選び抜き、お気に入りのものだけに囲まれて暮らす」という生き方。そこには、心安らぐ満ち足りた幸せがある。

 前回の記事はこちら→ものを捨ててすっきり暮らしたい! でも家族が協力してくれない......そんなときの対処法は?

 アパレルブランド「AYAKO KOSUGE」を立ち上げた小菅彩子さん。Instagramでの発信をきっかけに、ミニマルライフを始めた。子育てをしているとものを減らすのが難しそうだが、どう工夫しているのだろう。そして、服を大量に売り大量に買っていたという、アパレル店員時代からの変化とは。


~以下本文より一部抜粋、再構成~

子どもたちの声とともにつくるキッズルーム

 子ども部屋にあるおもちゃ棚は一つ。もともとは二つあったのですが、娘と息子に、おもちゃ一つひとつを「これいる?」と聞き、「いらない」と答えたものを手放したところ、量がぐっと減り、おもちゃ棚一つとさよならすることができました。

「おもちゃ棚が一つ減り、床面積が広くなったことで、子どもたちものびのび遊べるようになりました。」
「おもちゃ棚が一つ減り、床面積が広くなったことで、子どもたちものびのび遊べるようになりました。」

 3歳の誕生日に娘にプレゼントしたのは、段ボールでできたキッチン。木でできた本物のようなキッチンも素敵ですが、手放しやすさを考えて、我が家ではこのキッチンを選択しました。

段ボールのおままごとキッチン。「持ち運びも、いつか卒業する時の処分も楽ちん」
段ボールのおままごとキッチン。「持ち運びも、いつか卒業する時の処分も楽ちん」

学習机は置かず、リビングで勉強

 息子が小学生になる時、購入しようかどうしようかとても悩んだのが、学習机です。

 本当に必要?と自分に問いかけ、息子にも聞いたりしながら考えた末、我が家では購入しないという選択をしました。

 息子はリビングのテーブルで勉強していて、今のところ不自由はありません。いつかもし自分の部屋や机が欲しいと言ってきたら、その時に、本人が気に入った机を購入しようと思っています。

ベッドを手放したら生まれた、「何もない部屋」

 賃貸の2LDKアパートに住んでいますが、小さな子どもたちとの3人暮らしだと、主に過ごすのはリビングとその隣の子ども部屋。もうひと部屋のここには、かつてベッドを置いていましたが、どうしても「寝るだけの部屋」になってしまっていたので、思い切ってベッドを手放しました。

ベッドをなくした部屋が「多目的ルーム」に
ベッドをなくした部屋が「多目的ルーム」に

 すると、YouTubeの撮影ができたり、子どもたちと寝そべって遊べたり、ひとり寝転んで読書できたりと、部屋の使い方は無限大に。何もないこの部屋にいると、思考もクリアになるのを感じます。

 そして一番良かったと思うのは、掃除のしやすさ。今まではベッドの下や壁との隙間には、ちょっと見ない間に信じられないくらいホコリがたまってしまっていたけれど、それがなくなり、いつも快適に暮らせるようになりました。

 手放したベッドの代わりに、今は、三つ折りマットレスを敷いて寝ています。その名の通り三つ折りなので、ぽんぽんとリズムよく簡単に畳むことができます。いつも同じサイズに収まるので、布団のように畳む幅を気にする手間から解放されました。

 天気が良い日はベランダのそばに置いて日光を当てたり、湿気が気になる季節には、サーキュレーターや扇風機で風を当てて乾燥させたりすることもできます。

 自分の中の「本当にいる?」という声に従ってみたら、心地よく暮らせるようになりました。

マットレスなら、湿気飛ばしも簡単
マットレスなら、湿気飛ばしも簡単

過去の服を手放せば、今の自分に集中できる

 今でこそ、心からミニマリストになってよかったと思っていますが、その過程の中では、ジレンマを感じることもありました。

 服が大好きな私は、長くアパレル業界で働き、たくさんの服を売ってきました。

 渋谷109で働いていた頃などは、セールの時期になれば、「服2点目以降○%オフです!」などと声を張り上げて懸命に接客。とにかくたくさんの服を買っていただくために、努力を重ねてきました。

 アパレルで働いていた頃は、担当ブランドの服が売れれば売れるほどに、私の物欲も掻き立てられていました。社員割引を活用してたくさんの服を買い、気付けば手元には、200着以上の服がありました。

 30歳の時、2人目の産休に入ってずっと家にいるようになると、実はそんなにたくさんの服は必要ないということに気がつきます。そこで、「もう着ないな」と思った服はとにかく手放す作業を始めましたが、「服をたくさん売ってきた私が、今、たくさんの服を捨てている」という現実に、一時、自己嫌悪に陥ってしまいました。

 けれど、徐々に育まれつつあったミニマリスト精神が、「今に集中して生きる」ということを私に教えてくれました。大切なのは、「過去がどうだった」とか、「未来がこうなるかもしれない」とかではなく、「今、どうなのか」ということ。そのことに気がつけた私は、過去を振り返ることなく、未来を心配することもなく、今、自分に必要のない服を手放していくことができました。

 過去の服を手放していくうち、今の自分が研ぎ澄まされていく。いつしか、そんな感覚すら抱くようになっていきました。そして、今後また服を販売する仕事をすることがあっても、今の自分のミニマルマインドを忘れずにいたいという思いから、かつての売り方とは真逆のファッションブランド、「AYAKOKOSUGE」を立ち上げました。

「服はあるのに着る服がない」から抜け出すことができた

 長年アパレル業界に携わっていた私。気がつけば服の量は尋常ではないことになっていました。「毎日同じ服は恥ずかしい」と思い込み、今思えば「買いたい」よりも「買わなきゃ」の精神になってしまっていたのかもしれません。「毎日違う服を着なきゃ」̶̶誰に言われたわけでもないのに、勝手に自分にそんな呪いをかけていました。

 けれど、毎日あれこれ服を変えていた私はきっと、自分らしさを見失った、誰の印象にも残らない人だったのだと思います。

 今は私服を制服化させ、夏はコットンのTシャツにデニム、冬はニットにデニムというほぼ決まったスタイルで過ごしています。

冬のワードローブ。2着のニットとボディーバッグはAYAKO KOSUGEのもの。季節を通して、全22着を着回しているそう。
冬のワードローブ。2着のニットとボディーバッグはAYAKO KOSUGEのもの。季節を通して、全22着を着回しているそう。

 毎日同じような服を着ていることで、不思議なことが起きました。「小菅さんといえば」という感じで、私のことを覚えてくださる方が増えたのです。

 また、いつも同じ服を着ることで「一貫性のある人」という印象にもつながったようで、SNSでの発信内容も相まって、ブレない強い人、と思っていただけるようになりました。実際はメンタルがぐらついてしまう時もたくさんあるのですが(笑)。

 服を減らし、本当にお気に入りのものだけに厳選したことで、私には、かつての「たくさんの服を持ち、毎日違う組み合わせで着る人」から、「少しの服を同じ組み合わせで着る人」という、まったく違うイメージが定着。それがとても心地良く、嬉しいのです。立ち上げたファッションブランド「AYAKOKOSUGE」では、今の私の生活に馴染む服を販売していますが、ありがたいことに、たくさんのリピーターの方に支えていただくブランドに成長しました。

~以上、本文より~


 子どものおもちゃも自分の服も、「本当にいる?」と選び抜いている小菅さん。当たり前にあったものでも手放してすっきりさせると同時に、どうしても手放せないものもあるという。それは、娘が初めて泣かずに保育園へ行けたときに履いていた、思い出の長靴だ。

 ミニマリストだから何でも捨てる、というわけではない。不要なものを手放していって、「本当に大切なもの」を見つけていくのが、ミニマルな生き方の真髄なのかもしれない。


■小菅彩子さんプロフィール
こすげ・あやこ/アパレル専門学校卒業。アパレル業界に携わりながら、30 歳の時に二人目を出産したことを機にミニマリストに。ミニマルマインドを反映させたアパレルブランド「AYAKO KOSUGE」を立ち上げたほか、SNS 発信者のためのオンラインサロン運営などマルチに活動中。 Instagram:@ayako.kosuge.official


※画像提供:日本文芸社


   
  • 書名 「大好きなもの」しか持たない 少ない暮らし
  • サブタイトル時間とお金に愛される ミニマリスト7人の毎日
  • 監修・編集・著者名日本文芸社 編
  • 出版社名日本文芸社
  • 出版年月日2023年1月18日
  • 定価1,540円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・192ページ
  • ISBN9784537220667

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