本を知る。本で知る。

「こんな小説書いてみたい」芥川賞作家・羽田圭介が憧れる本とは

(企画名)#木曜日は本曜日

 2015年、『スクラップ・アンド・ビルド』で芥川賞を受賞した羽田圭介さん。テレビ番組に多数出演するなど多忙な日々を送るようになったが、出版業界以外の人と関わる中で、こんな気づきがあったのだという。

みんな本読んでないんだなという現実を知るわけですよね。(中略)本読まない人がほとんどの世界で自分は本を出そうとしているんだっていう現実を知ってですね。

 「週に1回、木曜日は街の本屋に足を運んでもらおう」と、東京都書店商業組合が立ち上げたプロジェクト、〈#木曜日は本曜日〉。現在、毎週木曜日に、著名人・インフルエンサー・作家が「人生を変えた本」を紹介する〈東京○○書店〉が更新中だ。これまでに加藤シゲアキさん岸田奈美さん成田悠輔さんらが登場し、それぞれの「人生を変えた本」について語った。

 出版業界の外の人々との出会いをきっかけに、「本を読む余裕がないこの世界で読んでもらえる小説とは?」ということを考え始めた羽田さん。しかし同時に、わかりやすくて強い言葉ばかりがもてはやされる現実に閉塞感を覚えるようにもなった。そんなときに発散の場となったのが、やはり本を読むことだった。そんな羽田さんの人生に影響を与えた本とは。

中1で「小説の魅力」を知った、思い出の本

 1冊目に紹介したのは、高村薫さんのスパイ小説『リヴィエラを撃て』(新潮社)。謎の東洋人スパイ・リヴィエラを巡り、CIAやMI5・MI6が国際諜報戦を繰り広げるという、スケールの大きな作品だ。中学1年生の頃におばから本をもらい、長い電車通学の時間で読んでいたという。

 羽田さんいわく、他のスパイ小説と読み比べると「断然違う」のだそう。スパイものといえばエンターテインメントのイメージが強いが、羽田さんは、「話の筋だけを追ってドキドキハラハラする話なら映画でいい。小説でだらだら読みたくない」とバッサリ。対して『リヴィエラを撃て』には、描写力や、文章を追って初めてわかるラストの意外性など、小説ならではの面白さがあるのだという。「小説の魅力っていうのを強く知った」「こういう小説書いてみたいなと思いましたね」と語る羽田さん。少年時代の心に、深い印象を残した作品のようだ。

2行先の予想がつかない小説が好き

 2冊目に紹介した、フランスの作家アルフレッド・ジャリの『超男性』(白水社)は、羽田さんが一言で表すには「訳のわからない小説」。自転車レースを題材にした作品だが、「5人乗り自転車に乗ってあり得ない速さで走っている間に1人死んでいる」といった、理解を超える展開が続く。しかし羽田さんいわく、その「ストーリーも予想がつかないし、2行先の表現も予想がつかない」ところが面白いのだそうだ。

 さらに3冊目の『人生は驚きに充ちている』(新潮社)は、2020年刊行の本で、作家・音楽家の中原昌也さんによる小説やインタビュー、エッセイなどが収められている。羽田さんが中原作品を読み始めたのは高校3年生の頃だそう。中原さんの小説にはメッセージ性も起承転結もなく、「小説書くのがしんどいとか、特定の政治家の悪口」などが書いてあるそうなのだが、その文章をただ追いかけているだけで面白いのだという。「これこそ文学なんじゃないのかと思ったんですよね」と、熱く魅力を語った。

 紋切り型の表現が好きではないという羽田さん。自由な文章表現で楽しませてくれる本に魅了されてきたようだ。

本屋さんには、本の数だけ人間がいる

 動画後半では、通っていた学校が近くにありよく訪れていたという、東京都千代田区の「三省堂書店 神保町本店」へ。羽田さんが『黒冷水』(河出書房新社)でデビューしたのは17歳のときだった。単行本の発売日に、学校帰りにすぐ三省堂へ行き、入口の近くに自分の本がずらりと平置きされているのを見た思い出があるという。

 羽田さん流の、本屋を楽しむ方法とは?

本の数だけ人間がいると思えばいいんですよ。いろんな考えを持った方々がいろんな本を書かれてるんで、(本屋で)いろんな人と出会えると思えばいいと思うんですよね。

 「出会い系みたいな感じ(笑)」とオチまでばっちり。「出会い系」だと思って本屋へ行くと、見え方が変わりそうだ。


〈羽田圭介さんの「人生を変えた本」10冊〉

『群青の夜の羽毛布』山本文緒(KADOKAWA)
『ブエノスアイレス午前零時』藤沢周(河出書房新社)
『罪と罰』ドストエフスキー(新潮社)
『掃除婦のための手引き書』ルシア・ベルリン(講談社)
『雨の島』呉明益(河出書房新社)
『シンセミア』阿部和重(講談社)
『リヴィエラを撃て』高村薫(新潮社)
『砲艦銀鼠号』椎名誠(集英社)
『超男性』アルフレッド・ジャリ(白水社)
『人生は驚きに充ちている』中原昌也(新潮社)

 〈東京羽田圭介書店〉の10冊には、全て小説をチョイス。近未来を描くSFやハードボイルドなど、読み応えのある作品が並んだ。

 〈東京○○書店〉は毎週木曜日に更新される。来週は誰が登場するのだろうか。

 〈#木曜日は本曜日〉公式サイトはこちら。→https://honyoubi.com/

 また、東京の各書店では〈#木曜日は本曜日〉オリジナルデザインのしおりを配布している。配布店舗の一覧はこちら。→https://honyoubi.com/assets/data/present_shoplist.pdf

〈東京羽田圭介書店〉しおりデザイン
〈東京羽田圭介書店〉しおりデザイン

※画像提供:東京都書店商業組合




 


  • 書名 (企画名)#木曜日は本曜日
  • 出版社名(主催)東京都書店商業組合

書店の一覧

一覧をみる

書籍アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

漫画アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?