家事や仕事でさまざまな作業を同時並行で進めなければならない時、「マルチタスク」が苦手で苦しむ方も多いのでは。「どの作業から手を付けるべき？」「あれも考えなきゃ、こっちも決めなきゃ」などと考えることが多くてパニックになってしまう。上手に仕事をさばいている人は、どこが違うのだろうか。
それを教えてくれるのが本書、『究極の"マルチタスク"を実現する 執事のダンドリ手帳 マスター版』（クロスメディア・パブリッシング）だ。
著者の新井直之さんは、執事（バトラー）やコンシェルジュを派遣する企業の社長を務め、自らも執事としてフォーブス誌の世界大富豪ランキングトップ10に入る大富豪や、国内外の超富裕層を顧客に持つプロ中のプロ。数々のドラマや映画で執事役の俳優の所作指導なども行っている。
本書では、実際のエピソードを例に、富豪の無茶ぶりに応える執事のスキルをあなたに伝授する。
「お客様Aのパーティーの手配、お客様Bのお子さんの送迎、お客様Cの来日の準備......」などと、マルチタスクが絶えない執事のお仕事。複雑でスピードが求められる業務は「ダンドリ」で解決していくという。
業務が多すぎると、たいていの人はテンパってしまう。たとえば執事なら、こんな具合だ。
・「来週の会食のレストランの予約をする」
・「来月のパーティー会場を押さえる」
・「今週のパーティーの打ち合わせ」
・「ご主人様をお迎えするためのドライバーの手配」
・「執事がミスをして奥様からクレームが来た」
・「新人執事に仕事の進捗の確認をしないといけない」
・「海外のお客様のもとで働いている執事に連絡を取る」
・「ハウスキーピング要員のメイドが風邪をひいて急きょ来られなくなってしまった」......
想像するだけで容量オーバーになりそうだ。しかし、よく見てみると1つ1つは簡単に取り組むことができるものもある。仕事が重なった時は、「先を読む」ことが大切だ。まずは、今すぐにやるべきことを明確にしてみるといいという。
新井さんは本書の第1章で、依頼主を笑顔で空港へ送り出して業務終了...と思ったところで、空港に向かう2時間の間に「カルピスウォーター500本を揃えてほしい」と頼まれてしまったエピソードを例に、「先読み」の方法を明かしている。
新井さんはまず、「どこでなら、最も効率よく買うことができるだろうか？」と考え、カルピスウォーターの在庫を持っていそうな問屋をあたった。しかし、個人には販売してくれない。そこで次に、「卸売り以外で大量に仕入れている店」→ドン・キホーテをあたることに。大半をゲットできる目途はたったが、まだ足りない。最後に、「空港までの道の途中で買い集める」という方法で、なんとか苦境を乗り切った。落ち着いて考えれば誰でもできそうな方法だが、最初に断られた時点で「もう打つ手はない」と頭が真っ白になってしまう人も多いのではないだろうか。
人が突発的なことに対処できないのは、焦って思考がストップしてしまうからだ。新井さんは、「非常事態だからこそ落ち着いて一呼吸置くこと。そして、対策をいくつか考えてみて、先を見通してみること」が重要だと説く。
先を読むというのは、100歩も200歩も先を読むということではありません。ほんの2～3歩でいいのです。（本文より）
本書の序文（はじめに）には、「実際に『執事を雇う』ことは難しいかもしれませんが、この本を『執事の代わり』としてお読み頂けますと幸いです」と書かれている。その言葉通り、目次には「計画を立てるってどう立てればいいんだね？」「メールの返信が億劫だ」「客がすごい勢いで怒ってるんだが」「整理整頓？ 何だそれは」といった具合に、大富豪風？のわがままな困りごとが並ぶ。
様々なタスク管理のビジネス書があるが、執事の仕事を参考にしたものはかなりユニークだ。どんな難題も涼しい顔でテキパキとこなす自分になるために、執事の心得を学んでみてはいかがだろうか。
■新井直之さんプロフィール
あらい・なおゆき／日本バトラー＆コンシェルジュ株式会社 代表取締役社長
株式会社CSK（現：SCSK株式会社）、EMCジャパン株式会社（現：デル・テクノロジーズ株式会社）、SAPジャパン株式会社、日本オラクル株式会社を経て、日本バトラー&コンシェルジュに入社。企業向けの講演や研修、コンサルティングを行うかたわら、ドラマ・映画・舞台版『謎解きはディナーのあとで』、『執事 西園寺の名推理1・2』、映画版『黒執事』などメディア作品の執事監修、俳優への所作指導を手掛ける。著書に『執事だけが知っている世界の大富豪 58 の習慣』（幻冬舎）など多数。
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