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「ジブリ顔」ってどうやって作られたの? 宮崎駿・高畑勲監督作品を学問する一冊

ジブリ・アニメーションの文化学

 宮崎駿監督の10年ぶりの新作『君たちはどう生きるか』が、2023年7月14日に公開されることが決まった。2022年11月には愛知県に「ジブリパーク」がオープンし、今スタジオジブリの話題は盛り上がりを見せている。

 そんな中、『ジブリ・アニメーションの文化学 高畑勲・宮崎駿の表現を探る』(七月社)が発売された。本書は、アニメーションの文化や作品を専門とする研究者ら10人が、ジブリ作品を学術的に論じた一冊だ。


『千と千尋の神隠し』がベルリン国際映画祭の金熊賞、アカデミー賞の「長編アニメーション部門」を受賞するなど、日本国内だけでなく世界中で評価され、愛されているジブリ作品。しかし、これまで発表されてきたジブリのアニメーション作品に関する議論は、必ずしも高い水準のものではなかったと、本書編者で近代文学・アニメーション研究者の米村みゆきさんは指摘している。そこで、本書はこのような方針を掲げている。

本書は、スタジオジブリのアニメーションを学術的な対象として、真正面から取り組むことを目指した論文集である。

 例えば、映画批評家の石田美紀さんによる第1章「『ジブリ顔』とは何か──キャラクター造形という協働」では、「ジブリ顔」とも呼ばれるジブリ作品のキャラクターの顔の来歴をたどっている。多くのアニメーターが作品制作に関わりながらも、視聴者が見ると「ジブリのキャラクターだ」とすぐにわかるあの顔は、誰の手でどのようにデザインされてきたのだろうか。

 他にも、宮崎駿作品で繰り返しモチーフになる航空機体の作中での役割や、戦争の歴史の描き方などの切り口から、ジブリ作品を論じている。主に取り上げられている作品は、ジブリ作品からは『かぐや姫の物語』『風立ちぬ』『魔女の宅急便』『火垂るの墓』『コクリコ坂から』、スタジオジブリ設立前の高畑勲監督作品から『アルプスの少女ハイジ』『太陽の王子 ホルスの大冒険』『母をたずねて三千里』だ。あなたの好きな作品、思い出に残っている作品はあるだろうか。

 親しまれ続けているジブリ作品の、新たな魅力に気づける一冊だ。

【目次】
はじめに──スタジオジブリのアニメーションと「作家主義」/米村みゆき

第1章 「ジブリ顔」とは何か──キャラクター造形という協働/石田美紀
コラム① 「魔法少女」として読む『かぐや姫の物語』/須川亜紀子

第2章 航空機体の表象とその運動ベクトル──宮崎駿『風立ちぬ』の戦闘機は何を演じているのか/キム・ジュニアン
コラム② 『魔女の宅急便』における労働とコミュニケーション/須川亜紀子

第3章 焼跡と池──高畑勲『火垂るの墓』における地域表象/横濱雄二
コラム③ スタジオジブリの「見立て聖地」/須川亜紀子

第4章 四大元素と菌の問題系──宮崎駿『風立ちぬ』論/友田義行
コラム④ 〈垂直〉の距離──天空と坑道/友田義行

第5章 『コクリコ坂から』と「理想世界」──戦争の記憶をめぐって/奥田浩司
コラム⑤ 「スタジオジブリ」論の現在を知る三冊/平野泉

第6章 高畑勲『アルプスの少女ハイジ』──ドイツ語版アニメーションとの比較研究/西口拓子
コラム⑥ 舞台化されたスタジオジブリ作品/須川亜紀子

第7章 高畑勲と「大衆と共にある芸術」──『太陽の王子 ホルスの大冒険』と『母をたずねて三千里』の音楽/井上征剛
コラム⑦ 「宮崎駿」を知る三冊/平野泉

第8章 動物/人間の境界線の攪乱──高畑勲の動物アニメーション映画/米村みゆき

初出一覧
あとがき/須川亜紀子

〈編者プロフィール〉

■米村みゆきさん
よねむら・みゆき/専修大学文学部日本文学文化学科教授。日本近現代文学、アニメーション文化論。『アニメーション文化 55のキーワード』(共編著、ミネルヴァ書房、2019年)、『ジブリの森へ──高畑勲・宮崎駿を読む[増補版]』(編著、森話社、2008年)。

■須川亜紀子さん
すがわ・あきこ/横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院教授。ポピュラー文化論、ファン研究、2.5次元文化研究。『2.5次元文化論──舞台・キャラクター・ファンダム』(青弓社、2021年)、『少女と魔法──ガールヒーローはいかに受容されたのか』(NTT出版、2013年)。



  
  • 書名 ジブリ・アニメーションの文化学
  • サブタイトル高畑勲・宮崎駿の表現を探る
  • 監修・編集・著者名米村 みゆき、須川 亜紀子 編
  • 出版社名七月社
  • 出版年月日2022年12月23日
  • 定価2,420円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・352ページ
  • ISBN9784909544285

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