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昼食は500円以内。ラーメンが贅沢。「平均年収443万円」の残念な実態

年収443万円

 年収443万円。国税庁が毎年発表する「民間給与実態統計調査」によると、これが1年を通じて働いたこの国の給与所得者の平均年収だという。

 もちろんこれは、非正規雇用で働く人からすれば、夢のまた夢の数字。「年収が400万円もあったら、安心して暮らしていける」と考えるのも当然だろう。しかし、現実はちょっと違うようで――。

 2022年11月17日に発売されたジャーナリスト・小林美希さんの『年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活』(講談社)は、そんな平均年収で暮らす人々の生活実態に迫ったルポルタージュだ。

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 これまで母子家庭や中年フリーターなど、さまざまな人々を取材してきた小林さん。今回取材したのは、平均年収で暮らす人々、平均年収を大きく下回る人々だ。

 平均年収443万円というのは、あくまで平均値。中央値は思いのほか低く、年収の分布を見ると、最も多いのが「300万円超400万円以下」で、全体の17.4%を占める。次に多いのが「200万円超300万円以下」の14.8%で、3人に1人が200万~400万円の間の収入となる。ここ何年も、その傾向は変わっていない。それに加えて、働き盛りの男性の収入は減っているという。

 また、社会保険料の引き上げなどによって可処分所得も減少。物価は上昇し、もらえる年金は先細り、老後の資金が何千万円も必要らしい。そんな日本の状況のなか、平均年収であることで、いったいどんな生活ができるのか。

 取材を進めるなかで小林さんが発見したのは、平均年収443万円では「普通の暮らし」ができないという事実だ。昼食は必ず500円以内、スタバのフラペチーノを我慢、月1万5000円のお小遣いでやりくり、スマホの機種変で月5000円節約、ウーバーイーツの副業収入で成城石井に行ける、ラーメンが贅沢、サイゼリヤは神、子どもの教育費がとにかく心配......。

 本書は、そうした個々の生活のディテールに迫り、「平均年収では"普通"の暮らしができない国」の現実を描いている。就職氷河期世代を中心とした当事者たちが語る、ありのままの生活とは。自分にとっての理想の収入はどれくらいで、たまの贅沢とはどんなことなのか――。自分の生活を見つめ直すきっかけになる1冊だ。

【目次】

第1部 平均年収でもつらいよ
●毎月10万円の赤字、何もできない「中流以下」を生きる
神奈川県・48歳・会社員・年収520万円
●「私は下のほうで生きている」コンビニは行かず、クーラーもつけない生活
東京都・35歳・自治体職員・年収348万円(世帯年収1000万円)
●不妊治療に対する経済的不安......「リーマン氷河期世代」の憂鬱
北陸地方・33歳・電車運転士・年収450万円(世帯収入900万円)
●教育費がとにかく心配......昼食は500円以内、時給で働く正社員
東京都・44歳・会社員・年収260万円(世帯年収1000万円)
●3人の子育てをしながら月13回夜勤をこなす看護師の激務
北陸地方・42歳・看護師・年収670万円(世帯年収1300万円)
●夫婦で手取り65万円、「ウーバーイーツ」の副業でちょっとした贅沢を実現
東京都・41歳・倉庫管理・年収660万円+副業(世帯年収約1500万円)

第2部 平均年収以下はもっとつらいよ
●月収9万円シングルマザー、永遠のような絶望を経験した先の「夢」
東海地方・41歳・秘書・年収120万円
●子どもに知的障がい、借金地獄......マクドナルドにも行けないヘルパーの苦境
茨城県・38歳・介護ヘルパー・年収48万円(世帯年収400万円)
●コロナ失業...1個80円のたまねぎは買わない、子どもの習い事が悩みの種
北海道・29歳・清掃員・年収180万円(世帯年収540万円)
●共働きでも収支トントン、賃金と仕事量が見合わない保育士
東京都・40歳・保育士・年収300万円(世帯年収700万円)
●何もかも疲れた...認知症の母との地獄のような日常を生きる非常勤講師
埼玉県・56歳・大学の非常勤講師・年収200万円

第3部 この30年、日本社会に何が起きたのか?
「中間層が崩壊すれば、日本は沈没する」/「中流」という意識の低下/こうして「格差」は生まれた/働く人は何を求めているのか?/諦めムード、そして安楽死を望む人も/「非正規」という言葉はなくなったのか/世界から完全に取り残された日本......ほか

■小林美希さんプロフィール
こばやし・みき/1975年茨城県生まれ。水戸第一高校、神戸大学法学部卒業後、株式新聞社、毎日新聞社「エコノミスト」編集部記者を経て、2007年よりフリーのジャーナリスト。就職氷河期世代の雇用、結婚・出産・育児と就業継続などの問題を中心に活躍。2013年、「「子供を産ませない社会」の構造とマタニティハラスメントに関する一連の報道」で貧困ジャーナリズム賞受賞。『ルポ 正社員になりたい』(影書房、2007年度日本労働ペンクラブ賞受賞)、『ルポ 保育崩壊』『ルポ 看護の質』(岩波書店)、『ルポ 産ませない社会』(河出書房新社)、『ルポ 母子家庭』(筑摩書房)、『夫に死んでほしい妻たち』(朝日新聞出版)、『ルポ 中年フリーター』(NHK出版)など著書多数。



 
  • 書名 年収443万円
  • サブタイトル安すぎる国の絶望的な生活
  • 監修・編集・著者名小林 美希 著
  • 出版社名講談社
  • 出版年月日2022年11月17日
  • 定価968円(税込)
  • 判型・ページ数新書判・224ページ
  • ISBN9784065299289

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