「異状死」というと、解明が不可能な事件や事故に巻き込まれてしまったようなイメージだが、老衰で亡くなった場合でも当てはまってしまうことがあるという。なんと日本では、年間145万人の死亡のうち17万人の遺体が警察扱いとなっている。自宅で老親を看取ったら警察に聴取を受けた、という話も決して珍しくはないのだ。
平野久美子さんの著書『異状死 日本人の5人に1人は死んだら警察の世話になる』(小学館)では、まだまだ認知度が低い異状死について解説していく。
「異状死」とは死因不明の異常死体のことを指すが、その範囲は殺人や死体遺棄にかぎらない。自宅など病院以外での死亡や持病以外の死因の場合は、基本的に「異状死」として警察の捜査や医師による検視を受けることになるという。たとえ本人の希望通りに自宅で亡くなった場合でも、だ。
「ご愁傷様です。これから警察が来ますので、ご家族の方は出かけずに待機していてください」
警察が来る? 何のために? 何も知識がなかった私はその意味がわからなかった。
父は七月の猛暑をきっかけに体調を崩し、それこそ植物が朽ちていくような亡くなり方をした。しかも自室のベッドで本人の望む通り、眠るがごとく静かに大往生を遂げたのだ。その証拠に、長患いの果てのやつれた表情とはまったく別の、平穏な微笑みを浮かべてあの世へ旅立った。それなのになぜ警察が? 犯罪や事件とは無関係なのに......。
すると「お父さんはイジョウ死扱いになります」ときた。
この時に初めて「イジョウ死」という言葉を耳にしたのだが、その瞬間、「異常」というふた文字が頭に浮かんだ。なぜそんな言い方をされなければならないのか? 母と私は思わず顔を見合わせた。
(本文より)
さらに、異状死扱いされると検察や搬送などの費用は遺族負担になる。しかも、現金払いのみで10万円を超すことも。
本書では、このように異状死扱いされたときに起きるできごとを、著者の体験を交えて紹介していく。さらに、自身や家族が「異状死扱い」されないためにはどうすればいいのか、法医学者や警察医、在宅看取りを行う医師たちを取材し、その対策も探る。
<目次>
はじめに
第1章 父が、母が、「イジョウ死」扱いに
第2章 異状死という日常
第3章 異状死の異常な金銭考察
第4章 異状死は減らせるか?
第5章 施設でも起きる異状死
第6章 死因究明になぜ淡泊なのか
第7章 世論の高まりこそ大切
あとがき
参考史料一覧
■平野久美子さんプロフィール
ひらの・くみこ/東京都出身。学習院大学仏文科卒業。編集者を経て執筆活動へ。学生時代から世界各国を巡り、その体験を生かして多角的にアジアと日本の関係をテーマとしている。ジャンルにとらわれずユニークな視点と綿密な取材で多数の作品を発表。日本文藝家協会会員、一般社団法人「台湾世界遺産登録応援会」顧問。
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