朝日新聞内の短歌投稿欄「朝日歌壇」で、姉弟で活躍している小学生歌人がいる。山添葵ちゃんと、山添聡介くんだ。
(姉・葵ちゃんの歌)
いつもよりながくてすこしきつかったそつえんのひのせんせいのだっこ
薬局でもらったシールはアンパンマン私もうすぐ四年生です
弟の「あのね帳」を読んでみた私の知らない弟がいた
(弟・聡介くんの歌)
ふうせんが九つとんでいきましたひきざんはいつもちょっとかなしい
ミニトマトおとなになってもミニトマトぼくはいつまで大きくなるの
じゃんけんできめるのぼくはきらいですだいたいお姉ちゃんがかつから
シール、算数、ミニトマト......子どもの目から見たみずみずしい風景に、大人顔負けの情緒が織り込まれている。
姉弟が短歌を詠み始めたのは、母・聖子さんの影響だ。聖子さんは、葵ちゃんの二歳の誕生日にふとこの短歌を思いついた。
タンポポの綿毛で練習したおかげ二歳のろうそくふぅーっと一息
これを「朝日歌壇」に投稿したところ見事掲載され、以降短歌を作り続けてきた。
(母・聖子さんの歌)
毎日の三時のおやつは守るのに九時の就寝守らない子ら
ウェディングベールを選ぶように子は身にまといつつカーテン選ぶ
発音でわかってほしいこの場合あほやなぁとは好きということ
親子合わせて250回以上「朝日歌壇」「朝日大和歌壇」に選ばれている山添親子の短歌が、歌集になった。2022年9月2日発売の『歌集 じゃんけんできめる』(小学館)には、親子3人による厳選された約430首が掲載されている。
3人の短歌には、親子・姉弟ならではの面白さもある。お互いを詠んだ歌ももちろんほほえましい。さらにたとえば、同じクリスマスの時期に姉弟が詠んだ歌からは、山添家のクリスマスの光景が目に浮かぶようだ。
サンタさん気をつけて来て弟がいっぱい罠をしかけています(葵)
サンタさんぼくの家にはえんとつがないのにどこから入って来るの(聡介)
3人の歌は2012年から2022年までの年ごとに並べられている。順番に読んでいくと、短歌とともに子どもたちが成長していくさまが見て取れる。巻末には、作歌にはげむ子どもたちの日常を取材したインタビュー記事も収録されている。自然に短歌のある暮らしの中で、才能をはばたかせていく姉弟を見守って。あなたの暮らしにも、きっと短歌を迎え入れたくなる一冊だ。
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