パンク歌手から芥川賞作家、唯一無二の表現者へ。独特な文体とストーリーで多くのヒット作を生み出してきた小説家・町田康さんが、初めての「自分語り」の書である『私の文学史 なぜ俺はこんな人間になったのか?』(NHK出版)を発売した。
本書は、NHK文化センター青山教室で2021年10月から2022年1月にかけて行われた講座「作家・町田康が語る〈私の文学史〉」をもとに、加筆・修正し編集したものだ。町田さんは長らく「自分語りはみっともない」という気持ちがあったそうだが、講座の話をもらい、「そういえばやっていなかったな」「もう、そんなに意地張ってなくて、自分の話をとくとくと、なんの意味もないことを意味あるように言ってもええかな」と思ったという。全12回の講座で、小説、詩、音楽など、あらゆる角度から自分自身を「暴露」した。
第1回で話したのは、小学2年生のときに出会った『物語日本史 2』という本について。「これさえ読んでいなかったら、もっとまともな人生を送っていたかも」しれないと語るが、そこまで言う本とはいったいどのようなもので、当時の町田少年にどんな影響が及んだのか。町田さんの、古典を題材にした作品『告白』『ギケイキ』などとのつながりも見えてきて興味深い。
そのほか、
・詩とは「わからんけどわかる」もの
・おもしろいことは「本当のこと」
・土俗・卑俗にこそ真実がある
・脳のバリアを自分の言葉で突破する
など次々と持論を展開。気になる頭の中の世界が惜しみなく披露されている。
規格外の小説家はいかにして出来上がったのか? 町田康ファンはもちろん、まだ作品を読んだことがない人でも、本書で表現者・町田康の魅力にハマること間違いなしだ。
【目次】
第一回 本との出会い――書店で見つけた『物語日本史2』
第二回 夢中になった作家たち――北杜夫と筒井康隆
第三回 歌手デビュー――パンクと笑いと文学
第四回 詩人として――詩の言葉とは何か
第五回 小説家の誕生――独自の文体を作ったもの
第六回 創作の背景――短編小説集『浄土』をめぐって
第七回 作家が読む文学――井伏鱒二の魅力
第八回 芸能の影響――民謡・浪曲・歌謡曲・ロック
第九回 エッセイのおもしろさ――随筆と小説のあいだ
第十回 なぜ古典に惹かれるか――言葉でつながるよろこび
第十一回 古典の現代語訳に挑む
第十二回 これからの日本文学
読書案内
あとがき
■町田康(まちだ・こう)さん
1962年、大阪府生まれ。作家。81年レコードデビュー。92年に詩集『供花』発表。96年「くっすん大黒」で作家デビューし、同作でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。2000年「きれぎれ」で芥川賞、01年『土間の四十八滝』で萩原朔太郎賞、02年に短編「権現の踊り子」で川端康成文学賞、05年『告白』で谷崎潤一郎賞、08年『宿屋めぐり』で野間文芸賞を受賞。近年は『宇治拾遺物語』の現代語訳や『義経記』を翻案した『ギケイキ』などにも取り組む。小社刊に、中原中也の詩に言葉を寄せた『残響』がある。
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