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かっこつけずに英語を自分のモノにしたいなら、こんな魔法がある

ニューヨークが教えてくれた"私だけ"の英語

   ロングセラー「ニューヨークの魔法」シリーズ(文春文庫)の著者、岡田光世さんが、自身の英語との付き合いと英語習得のノウハウを語り尽くしたエッセイ『ニューヨークが教えてくれた"私だけ"の英語』が刊行された。

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   岡田さんは、ニューヨークをはじめアメリカ各地の市井の人たちの声をすくいあげてきた。過去のシリーズでも、こんな魔法のような英語のフレーズがあるのかと目を見開かされた経験がある。

   さぞかし英語が昔から得意だったんだろうな、と思っていたが、本書では、岡田さんが子どものころから英語とどのように付き合い、格闘してきたのかが、ありのままに綴られている。そこには外国とは縁遠かった日本人の女の子が、どうやって英語を自分のものにしていったかが、涙と笑いとともに記録されている。

アメリカで便秘になったJKがつかんだ英語習得の極意

   岡田さんは、ニュースサイト「J-CASTニュース」で2017年から4年にわたり、「『トランプのアメリカ』で暮らす人たち」を連載していた。全米各地の街角で初対面の市民たちに片っ端から声をかけては、トランプ大統領に対する率直な声を拾っていた岡田さん。2020年にトランプ氏が2期目を目指した大統領選も、暴動にも近い選挙運動の渦中に飛び込んで行き、ステレオタイプなマスメディアとは違った視点で克明な現場ルポを発信していた。

   何事にも体当たりで取り組む姿勢は、本作でも、英語をなんとしても自分のモノにしたいというバイタリティとなって発揮されている。

   Chapter1「アメリカの高校で過ごした1年」の章は、ウィスコンシン州での留学時代の波乱万丈の月日を活写し、ページをめくる手を止まらせない。「『便秘』に青でアンダーライン」の1節は、当時はうら若き女子高生だった岡田さんには申し訳ないが、腹を抱えて笑ってしまった。スマートに英語を習得しようとすればするほど、英語は学習者から離れていくということが身に染みてわかる。

   サブタイトルにある「"あなたの英語"だから価値がある」とは、流暢な英語を最初から目指すのではなく、まず、必要な言葉、自分で話せる言葉を増やし続けていけば、いつか英語は身についていると、英語を学ぶことをあきらめた人に再起を促す言葉でもある。

中学の英語教科書3冊があれば

   題名にもなっているニューヨークでの2度目の留学体験から、ニューヨークで生きていこうと決意するまでの日常も、様々なドラマが続くが、その一つひとつの物語を綴った節ごとに、とっておきの英文が紹介されている。それらをとりあえず書き止めておいて、ちょうどいいシチュエーションでアメリカ人に話せば、相手はニヤリとするだろう。

   そもそも「英語は嫌いだ」という人にはChapter6の「英語を好きになる13の方法」から読むのもいいかもしれない。下手な英語を話すことを「恥ずかしい」と思う気持ちを吹き飛ばす方法から、インターネットを使って日本での日常を英語漬けにするやり方(しかも自分の好きな世界で)を、実践的な視点で紹介している。読むときは横にスマホを置いておくことをお勧めする。

   本書「はじめに」の冒頭は、「アメリカ行きのスーツケースにいつも私は、中学英語の教科書を詰めた。誰もが慣れ親しんだ3冊の本が、ニューヨークでもこんな出会いをもたらしてくれるから。」という一文で始まる。

   そのあとに紹介される、岡田さんと高齢のアフリカ系アメリカ人女性とがバス停で交わす会話は、日本の中学英語レベルだが、その会話を通じて「ああ、この人と私は、同じ地球の上で"今"をともに生きている!」と岡田さんは実感する。

   お互いの気持ちや考えが言葉で伝わり、理解し合えたと感じた瞬間、人間は相手と時間を共有し、自分の生きる世界が広がったと感じる。それが英語でできれば、日本人には世界はまた違った姿で見えてくることを本書は教えてくれる。



 
  • 書名 ニューヨークが教えてくれた"私だけ"の英語
  • サブタイトル"あなたの英語"だから、価値がある
  • 監修・編集・著者名岡田 光世 著
  • 出版社名CCCメディアハウス
  • 出版年月日2022年6月21日
  • 定価1540円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・260頁
  • ISBN9784484222127

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