「50代になったイチダさんが『はたとわかった』これからの人生を豊かにする40のこと」――。
面白いコンセプトの本が刊行された。一田憲子さんの『もっと早く言ってよ。 50代の私から20代の私に伝えたいこと』(扶桑社)である。
本書は、50代の一田さんが「そうか! そういうことだったのか~!」とはたと「わかる」ようになってきたことを、やわらかい文体で綴った1冊。
「20代の頃に、このことを知っていたら、もっとラクな気持ちで生きてこられたのになあ」。そんな「もっと早く言ってよ。」という人生のあれこれを、20代の一田さん自身に、そしてすべての世代に伝えている。
「この本では、50代の今の私が『わかった』ことを、20代だった私に語りかける形で綴ってみました。私と同世代の方には『そうそう!』と共感していただけるかもしれません。20代、30代のまだ惑いの中にいる方には、不安や悩みを少し和らげるちょっとしたヒントになるかもしれません」
本書は、「PART1 くよくよするのもいいものだ」「PART2 自分らしさってなんだろう?」「PART3 日々の暮らしで学びとるもの」「PART4 人とのかかわりでわかること」「PART5 ココロとカラダはやっぱり基本」の構成。
[20代の私]の不安や悩みに、50代の一田さんが答えている。 [20代の私]の声は普遍的なものも多く、30代後半の評者もいたく共感した。
[20代の私] いつになったら「不安」がなくなるんだろう?
「不安」は、きっとあなたを育ててくれる。
一田さんは30代でフリーライターとして独立した頃、夜布団に入るたびに「ああ、私はいつになったら、不安じゃなくなるんだろう?」と思っていた。それが50代の今、「あの時の『不安』が私を育ててくれたんだなあ」とも思っている。
誰も仕事を依頼してくれなくなったら......と不安だったからこそ、自分で企画して1冊の雑誌を立ち上げたりもした。「現状に『欠け』みたいなものがなかったら、『よしっ!』と力が入らないんじゃないかなあ?」
「20代は20代の、30代は30代の不安がある。(中略)その時にしか味わえない悶々とした思いが、教えてくれることがきっとあるのだと思います」
「欠け」も「不安」もない生き方は、スマートだが味気ない。なるほど、「その時にしか持てない不安がある」と思うと、今の不安もそんなにわるいものではない気がしてくる。
続いて、こちら。
[20代の私] 自分が「やりたいこと」がわからない。
わかるための第一歩は「やってみる」こと。
若い頃の自分探しと、ある年齢になってからの自分探しとでは、切実さが違う。一生このままだったら......とだんだん焦ってくるわけだが、一田さんの考えはこうだ。
「50歳を過ぎた私が言えることがひとつあります。それは『今すぐ、やりたいことをエイッて決めちゃった方がいい』ってこと。(中略)私が、やっとこの頃わかったのは、人って『わかった』から『やる』のではなく、『やる』から『わかる』ってこと」
こんなエピソードも。一田さんが40代になっておしゃれ迷子になった時、ムックを立ち上げた。おしゃれな先輩たちは、「失敗をいっぱいして、やっと似合うものがわかるようになりました」と教えてくれた。
「正しくなくてもやってみればいい。これ、もっと早く知りたかったなあ。大事なのは、行動できなくてもいいから、自分の中でモヤモヤしているものを『忘れない』ってことなんじゃないかなあ。(中略)かかる時間は、人それぞれでいいんだと思います」
20代の自分に教えたいことはいくらでもある。教えたいと思うのは、そこに若干の後悔があるからでもある。ただ、一田さんが書いているとおり、「『わかる』には、それだけの時間が必要だった」こともたしか。
数十年経ったら、今度は○○代の自分から今の自分に伝えたいことも出てくるだろう。いつか「わかる」かもしれない大事なことを、ちょっと先取りして一田さんが教えてくれる本書は、今読んでおきたい1冊。
■一田憲子さんプロフィール
1964年生まれ。編集者、ライター。OLを経て編集プロダクションへ転職後、フリーライターとして数々の書籍や雑誌で活躍。ムック『暮らしのおへそ』『大人になったら、着たい服』 (ともに主婦と生活社)は、企画から編集までを手がける。取材やイベントで全国を飛び回り、著名人から一般人まで、これまで数多くのインタビュー取材を行い、その独自の筆致には定評がある。著書に『大人になってやめたこと』(扶桑社)など。ホームページ「外の音、内の香(そとのね、うちのか)」では、暮らしの知恵を綴っている。
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