猫を飼っているから長期の旅行は難しい......そんな人もいるだろうが、もし、飼い猫といっしょに飛行機に乗って、世界中を巡れたとしたら?
そんな夢を実現させた写真集『黒猫ノロと世界を旅した20年』(ハーパーコリンズ・ジャパン)が、2022年7月1日に発売された。
猫ぎらいだった著者・平松謙三さんと、黒猫の「ノロ」が世界37か国を巡る様子を綴った、オールカラーのフォトエッセイだ。スウェーデン、イギリス、フランス、エジプト......など、2人が訪れた国はヨーロッパから中東、アフリカまで多岐にわたる。
なぜ猫ぎらいの男性がノロを飼うことになったのか? 平松さんと、カラスに襲われていたノロとの出会いの他、旅に出ることになったきっかけや各国のエピソードなど、20年の全てを詰め込んだ「集大成」と言える1冊だ。
平松さんとノロとの旅は日本だけでなく海外でも話題になり、ノロは「世界を旅する猫」として人気に。本書では、これまであまり語られてこなかったノロの幼少期の話や、初収録の貴重な写真も多く掲載されている。
「第2章 ノロと旅 冒険編」では、ノロと共に楽しく旅をしていた平松さんが、街中でよく声をかけられたときの思い出を語っている。
「なかでもドゥブロヴニク(クロアチア)でイタリア人の女の子に『ブラビッシモ!』と言われたのは、今でも覚えているほど気分がよかった」
「ブラビッシモ」とは「ブラボー」の最上級で、「最高!」「素晴らしい!」のような意味だ。
「僕らが『わざわざ面倒なことをやって楽しんでいる』ということを、そんな一言で称えてくれたのが嬉しかったのだ」
ヨーロッパでは、楽しそうにしている人や好きな時間を楽しんでいる人に「いいね!」と言葉をかける風潮があったそう。写真はもちろんのこと、各国の気風にも思いを馳せたくなるような、平松さんのエッセイにも引き込まれる。
ところで、「猫も時差ボケするの?」と疑問に思ったことはないだろうか。平松さんも、同様の質問をよくされるそうだ。
ノロの場合、「時差ボケはなかった」と平松さんは結論づけている。生活リズムもきちんと調整できたようで、帰国の翌朝でもいつもと同じ時間に目を覚まし、ごはんトレーの前で朝食を待っていたのだとか。
「僕らがなかなか起きてこないと『にゃー、にゃー』と起こしに来るところまで普段通りで、絶賛時差ボケ中の僕には、正直ウザいくらいだった」
たとえ異国の地でも、目を覚ますといつものようにノロがいてくれたら、安心して朝を迎えられそうな気もする。
そんなふうに微笑ましいエピソードや印象的な思い出も交えながら、シャッターを切る飼い主の愛情が伝わってくる1枚1枚が、豊富に収録された本書。2021年秋に、惜しまれながらも20年の猫生を終えたノロが、世界各国の人たちに愛されてきたことが伝わってくる。
鑑賞していると、2人(1人と1匹)といっしょに旅をしている気分になれるのではないだろうか。
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