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手塚治虫文化賞マンガ大賞『チ。ー地球の運動についてー』ってどんな作品?

チ。―地球の運動について― 1

 2022年4月25日、朝日新聞社が主催する第26回手塚治虫文化賞の受賞作・受賞者が発表された。マンガ大賞(年間のベスト作品)には、『チ。―地球の運動についてー』(小学館)が選出された。

 手塚治虫文化賞は、漫画家・手塚治虫さんの業績を記念し、手塚さんの志を継いでマンガ文化の健全な発展に寄与することを目的に創設されたマンガ賞。日本国内で刊行・発表されたマンガで、優れた成果をあげた作品および個人・団体に贈られる。中でも、年間を通じて最も優れた作品に贈られるマンガ大賞は、これまでに『ゴールデンカムイ』『3月のライオン』『キングダム』『JIN-仁-』などに贈られ、名誉ある賞として知られている。

 今回は、そのマンガ大賞に選ばれた注目作『チ。―地球の運動についてー』について紹介する。

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作者は若手の星

 『チ。―地球の運動について―』の作者である魚豊(うおと)さんは、1997年、東京都生まれの漫画家。連載がはじまった2020年にはまだ20代前半だった。

 中学1年生の時にアニメ『バクマン。』を見てマンガの投稿を始め、2017年、週刊少年マガジン新人漫画賞で入選した読み切り作品『佳作』でデビュー。

 2018年、講談社の漫画アプリ「マガジンポケット」ではじまった初の連載作品『ひゃくえむ。』は、当初単行本化されない予定だったが、SNS上で単行本化の希望が殺到、一転単行本化が決まるという異例の快挙が話題となり、ネットニュースでも取り上げられた。

 そして2020年、ビッグコミックスピリッツにて『チ。―地球の運動について―』の連載をスタート。連載当初からネットで大きな注目を集め、「マンガ大賞」、「次にくるマンガ大賞」、『このマンガがすごい!』ほか、様々なマンガ賞で上位にランクインするなど、新世代を代表する若手の一人として知られている。

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『ひゃくえむ。1』(講談社)

人間の意思の強さを描く

 人生をテニスに捧げてきた主人公が、突如現れた天才プレーヤーに強烈に嫉妬する『佳作』、同じく100メートル走に人生を捧げる少年たちの青春を描いた『ひゃくえむ。』と、恋愛要素などを排除し、スポーツに全身全霊をかける若者の内面描写に集中する作風で注目を集めていた魚豊さん。

 15世紀のヨーロッパを舞台に、地動説の証明に命を懸ける人間たちを描いた最新作『チ。―地球の運動について―』でも、作品の焦点は地動説そのものではなく、地動説をめぐる登場人物たちの感情の移り変わりにあてられている。

 物語は主人公を固定せず、視点が様々な人物に移ろいながら進んでいく。天文学に詳しい天才少年、字が読めないのに地動説を探究する男、才能があるのに女だからと研究に参加できない少女......。主人公たちの属性はバラバラだが、地動説の魅力と、日々の暮らしの現実の間で、「他を犠牲にしてでも、本当にやりたいことをやるべきか?」という葛藤を抱えている点では共通している。

 逃亡、拷問、処刑......極限状態に追い込まれても自分のやりたいことを貫く、意思の強さと、そこに至るまでの迷い。舞台は中世でも、扱われるテーマは普遍的で、現代の読者に訴えかけてくる。日本のマンガの最先端が分かる作品だ。

画像提供:朝日新聞社
  • 書名 チ。―地球の運動について― 1
  • 監修・編集・著者名著:魚豊
  • 出版社名小学館
  • 出版年月日2020年12月14日
  • 定価650円(税込)
  • 判型・ページ数B6、160ページ
  • ISBN9784098607785

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