普通に生活して、普通に仕事してれば、普通に恋愛できるらしい。
じゃあ、その「普通」のハードルを越えられない人は――?
2022年4月13日、KADOKAWAから『初恋、ざらり』(ざくざくろ)の上下巻が同時発売された。
上戸有紗は、軽度の知的障害を持つが、普通の職場でその障害を隠しながら働いている25歳。知的障害を持ったまま普通の職場で働くことは難しく、バイトを次々にクビにされてきた。唯一続いているコンパニオンの仕事では、客から迫られるとすぐに身体を許してしまう。
またお客さんとしちゃった。ダメなのに。
でもコレでしか役に立てない。必要とされたら拒めない。
すぐ体を許してしまうのは、自己肯定感の低さの表れだ。仕事も生活も、周りの普通の人達のようには動けない。頑張っても、やる気があっても役に立てない。人が自分と接して喜んでくれるのは、身体を許した時だけ。
そんな生活を変えたいと、一番強く思っているのは有紗本人だ。きっと私にだって、身体以外で役に立てることがあるはず。でも、誰かに必要とされるにはせめて「普通」でなくちゃダメだ。わたしはバカだから、人より努力しなくちゃダメだ。そう思ってはいるけど、結果がついてこない......。
そんなある日、有紗は、ふとしたきっかけから、新しく入ったバイト先の社員・岡村に恋をしてしまう。
岡村に恋をしてから、有紗の生活は徐々に明るくなっていく。コンパニオンには行かなくなった。告白したら、両思いだった。職場にも馴染めた。「なくてはならない存在」「いるだけでいい」と認められて、幸せな気持ちになった。この幸せが、いつまでも続いて欲しい。
でも、知的障害があるということは、まだ言っていない。同じく障害を持つ友達からは「絶対障害あるって言っちゃダメだからね」と言われたし、今はこのままでいたい。
しかし、そう思っていた矢先、バイト先で、知的障害であることがみんなに知られてしまう。人づてにバレるよりは自分の口で言うべきだと、有紗はついに岡村に秘密を打ち明ける。
岡村は、「関係ない」と言ってくれた。でもそこから、すべての歯車が狂いはじめる。
有紗は、職場の同僚たちから「障害者だから」と特別扱いになり、距離を置かれ始める。賑やかだった両親への挨拶が、「知的障害」という言葉を発するだけで暗転する。一方的に甘えるだけでなく、岡村にふさわしい女性にならなければと、家事や仕事でできることを増やそうとするが、すべて空回りする。一度無くなったはずの「普通」へのコンプレックスが、より強い自己嫌悪として襲ってくる......。本人たちの意思とは無関係に広がっていく関係の溝。そんな流れに負けないため、お互いを失わないために、二人は懸命に努力する......。
「普通」になれない主人公が、普通の幸せを手にするために自分の心と向き合い、成長していく。「普通」というハードルを越えられない全ての人に勇気を与えてくれる、不安定だけど優しい恋の物語だ。
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