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もう一度読みたい!藤子不二雄Aさんの作品5選

笑ゥせぇるすまん(1) (藤子不二雄(A)デジタルセレクション)

 2022年4月7日、『笑ゥせぇるすまん』『忍者ハットリくん』『プロゴルファー猿』『怪物くん』などで知られる漫画家の藤子不二雄Aさん(本名:安孫子素雄さん)が、川崎市内の自宅で亡くなった。享年88歳。

 藤子不二雄Aさんは、1934年生まれ、富山県氷見市出身。1951年より漫画制作をはじめ、藤子・F・不二雄さん(本名:藤本弘さん)と「藤子不二雄」の共同ペンネームを使い、『オバケのQ太郎』などを合作したのち、単独で様々な人気漫画を連載。日本を代表する漫画家として知られている。今回は、そんな藤子不二雄Aさんのもう一度読みたい、読んだことがないなら一度は読んでおきたい名作マンガを紹介する。

インドで人気の忍者マンガ

 最初に紹介するのは、『忍者ハットリくん』だ。

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忍者ハットリくん(1) (藤子不二雄(A)デジタルセレクション)

 忍者の里・伊賀から忍術修行のため上京したハットリくんが、ある日突然、現代日本の普通の家庭・三葉家にホームステイ。同居する少年ケン一や、同じ小学校に通うライバルの甲賀忍者"ケムマキ"たちと、毎回様々な事件に巻き込まれていく「生活ギャグ」マンガ。

 藤子不二雄Aさんの作品の中でも圧倒的知名度を誇るが、2回行われた漫画連載はそれぞれ60年代と80年代、国民的な人気を持っていたアニメの放映も80年代のことなので、90年代以降に育ったいまの30代以下にとっては「名前は知ってるけど本編には一度も触れたことが無い」マンガの代表格となっている。そんな本作だが、実は、2004年からアニメが放映されたことがきっかけで、インドで人気を獲得。2012年には同国に向けて、ハットリくんがインドの国民的スポーツ・クリケットに挑戦したりする新作アニメも制作され、2019年以降も、第5〜6シリーズに相当する新エピソードが放送されているのだという。時代も国境も越えて愛される忍者マンガだ。

ドラマもヒットした怪物ギャグ

 次に紹介するのは、『怪物くん』。

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怪物くん(1) (藤子不二雄(A)デジタルセレクション)

 怪物ランドからやって来たちょっとワガママな王子・怪物太郎が、ヒロシ姉弟の住むアパートの住人となり、家来のドラキュラ・オオカミ男、フランケンと共に人間界で大暴れする様子を描くモンスターギャグ漫画。

 元々人気作ではあったが、2010年に嵐・大野智主演でドラマ化、翌年には映画化され、主題歌だった嵐「Monster」のヒットも相まって、若い世代にも人気を博した。家来の三人組・ドラキュラ、オオカミ男、フランケンという組み合わせや、「ガンス」「ザーマス」「フンガー」という特徴的な語尾は、光永康則『怪物王女』や、アニメ『らき☆すた』のオープニング「もってけ!セーラーふく」などの後続作品でしばしばパロディの対象になっている。また、2019年放送の朝ドラ「なつぞら」でも「バケモノくん」という本作をモデルにしたポスターが登場するなど、老若男女に支持されているシリーズだ。

欲深い人間を嗤うブラックな名作

 三つ目に紹介するのは、『笑ゥせぇるすまん』。
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笑ゥせぇるすまん(1) (藤子不二雄(A)デジタルセレクション)

 一話完結のオムニバス形式で、謎のセールスマン・喪黒福造(もぐろふくぞう)が、「心のスキマ」を持つ悩める現代人のちょっとした願望をかなえてやるが、相手が調子に乗って約束を破ったり忠告を聞き入れなかった場合には、その代償を負わせ、奈落に突き落とす......というプロットを展開する、皮肉の効いた「ブラックユーモア」を描いた青年向け作品。

 1968年、小学館『ビッグコミック』に掲載された読み切り作品『黒イせぇるすまん』が原型。1989年から1992年までTBS系の番組『ギミア・ぶれいく』で『笑ゥせぇるすまん』と改題してアニメ化され、広く知られるように。1999年にはドラマ化、2017年には再アニメ化されるなど、時代が下るにつれて人気を増している。漫画に人間の愚かさや弱さを笑うブラック・ユーモアを持ち込んだ先駆的な作品で、人差し指で相手を差しながら言い放つ決め台詞「ドーン!!!!」は流行語になった。もともと青年向けであることもあり、同じ路線の『黒ベエ』などと併せて、今のマンガ好きにとっては最も読みやすい、藤子不二雄A作品の入門編といえるかも?

痛快!いじめられっ子の容赦ない逆襲

 四つ目に紹介するのは、『魔太郎がくる!!』。

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魔太郎がくる!!(1) (藤子不二雄(A)デジタルセレクション)

 チビのうえに人一倍気が弱く、いつもいじめられている根暗な小学生・浦見魔太郎は、毎回様々な連中から激しいイジメを受けるが、我慢の出来ないイジメには超能力「うらみ念法」やオカルトアイテム、残虐な手段で復讐を図る。「こ・の・う・ら・み・は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か」とつぶやく主人公がとにかく不気味な、サスペンスホラーの傑作。

 自身もいじめられっ子であったという藤子不二雄Aさんが、少年向けとは思えないリアルな暴力描写で描く「昭和のイジメ」は、見ているだけでも気分が悪くなること必至。また、いじめられっ子である主人公を美化せずに内面・外面ともに醜く描写するその姿勢は、当時の少年たちに熱狂をもたらし、「コノウラミハラサデオクベキカ」という呪文が学校で流行するほど連載当初から日本全国で話題になったという。主人公の残虐な復讐の方法などが問題となり、現在発売されているバージョンでは20以上のエピソードが削除されている。『ドラえもん』の藤子・F・不二雄さんと対比され、藤子不二雄の「黒い方」と形容されることも多い藤子不二雄Aさんの「黒さ」の真骨頂が味わえる一作。

連載43年!ロマン溢れる青春物語

 最後に紹介するのは、『まんが道』だ。

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 藤子不二雄Aさんの自伝的作品で、自身がモデルの主人公・満賀道雄と才野茂(藤子・F・不二雄先生がモデル)が出会い、漫画家という夢に向かって共にあゆんでいく成長譚。

 『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)、『週刊少年キング』(少年画報社)、『藤子不二雄ランド』(中央公論社)、『ビッグコミックオリジナル増刊』(小学館)と4誌を渡り歩いて、なんと1970年から2013年まで43年間連載された異色の作品。数ある自伝的マンガの中でも圧倒的なボリュームを持っていて、戦後漫画史の貴重な記録として扱われることも。主人公の二人が、マンガ家志望の少年から日本を代表する作家に成長していく姿には、読んだ者誰もが引き込まれるような魅力が満載。二度ドラマ化された青春マンガの金字塔だ。

 以上、藤子不二雄Aさんのもう一度読みたい名作5選を紹介した。今回取り上げた作品の他にも、『無名くん』『少年時代』『PARマンの情熱的な日々』など、名作がたくさん。今すぐ読んで、藤子不二雄Aワールドに入門しよう。


  • 書名 笑ゥせぇるすまん(1) (藤子不二雄(A)デジタルセレクション)
  • 監修・編集・著者名藤子不二雄A 作
  • 出版社名小学館
  • 出版年月日2014年1月27日
  • 定価528円(税込)

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