2021年11月に99歳で亡くなった瀬戸内寂聴さん。「いくつになっても、人生はこれから」、そう言って人生を楽しく生きるヒントと勇気を与え続けてくれた。
寂聴さんの「言葉の遺産」が、電子書籍『瀬戸内寂聴 言葉の遺産 どん底に落ちたら弾みで上がる』(主婦の友社)となって1月31日に発売された。
本書は、雑誌「ゆうゆう」(主婦の友社)に掲載された瀬戸内寂聴さんに取材した記事の中から、寂聴さんの言葉をまとめたものだ。また、「主婦の友」の過去記事から、1982年にニューヨークを訪れた際の密着記事、1973年に得度してから半年後の記事も掲載されている。
「言葉の遺産」は、3つの章で構成されている。
「愛と女を語ることば」
「人生を楽しむことば」
「心を元気にすることば」
心が折れそうになったとき、もう立ち上がれないと思ったとき、人生の虚しさを感じたとき等、寂聴さんの紡ぐ言葉が勇気をくれる。亡くなってからも尚、そのパワーを持って私たちの心に語りかけてくれるものばかりだ。
寂聴さんは、「どん底の下はない。どん底に落ちたら、あとは弾みで上がるだけ」と語る。生活様式が変わって、何だか今一歩踏ん張れない、自分を鼓舞できない、そんな風に感じるあなたに、優しく寄り添う言葉をそばに置いてほしい。
本書の一部を紹介する。
「 そうでないとこの世が面白くないじゃないですか。恋をしていると良い仕事ができるし。周りを明るくします。不倫をおすすめしているわけではないですよ(笑)。好きだと思うだけでいいの。その人がそこにいて胸がときめくだけでいい。それだけで幸せになれますから」
「自分がまず自分をいたわり、愛し、かわいがってやる時間をもつこと。そうでなければ、今度は自分自身が自分に反抗します」
「仏教には "世は無常なり"の教えがあり、私はそれを『常ならぬ』と解釈しています。つまり、どんなことも変わる。どんな雨も必ずやむ。暗雲はいずれ消え、太陽も月も照る。人生も同じ。今どんなにつらくてもいずれ状態は変わるし、笑える日は来る。つらいときは『洋服を買おう』というように自分を慰める。写経など無になれる時間をもつのもいい。自分を抱きしめながら人生が好転する日までもうちょっとがまん。いずれ状況は変わるものですよ。ただ、いいことも続きません。いいことが続いたら、気を引き締めないと」
「いい泉はくめば尽きることがない。しかし、くみ出さなければ水は湧かない。だからいつも挑戦、そして勉強。そうすれば泉は枯れることはない」
「私も泣き暮らしたことがありました。毎日、ワンワン泣いていた。でも『辛い』は仏様の『落ちろ』のサイン。どんなことにも底はある。落ちて底に当たったら必ず浮上しますから。傷つくことを恐れてはいけません」
「豊かに生きてきた人ほど、重ねてきた歳月を思い出すのは楽しいことです。かすかすの生き方をしてきた人は貧しい思い出しかない。それは寂しいでしょ? だから、人間、いかに生きたかで勝負が決まるのね」
1982年6月、「主婦の友ニューヨーク友の会第1回総会」の記念講演のためにニューヨークを訪れた瀬戸内寂聴さん。スケジュールの合間に精力的にニューヨークの街を歩き回った様子がわかる密着記事も収録されている。還暦を迎えたばかりで元気いっぱいの寂聴さんの姿は必見だ。
寂聴さんは亡くなってからも、こうして私たちを励ましてくれる。
■瀬戸内寂聴さんプロフィール
1922年徳島県生まれ。東京女子大学卒業。作家。天台宗僧侶。'73年、51歳のときに岩手県の中尊寺で得度。法名・寂聴となる(旧名は晴美)。'63『夏の終わり』女流文学賞、'92年『花に問え』で谷崎潤一郎賞、'96年『白道』で芸術選奨文部大臣賞を受賞。'98年『源氏物語』の現代語訳完成。2001年『場所』で野間文芸賞、'11年『風景』で泉鏡花文学賞を受賞。'06年には文化勲章を受章。執筆活動の傍ら、京都の寂庵などで法話の会を行い、大勢の人が集まった。2021年11月9日遷化。享年99歳。
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