本書『純猥談 一度寝ただけの女になりたくなかった』(河出書房新社)は、「自分にもあったかもしれない、性愛にまつわる23人の体験談」を収録した1冊。
「私だけじゃなかったんだ」「心をそっと握りつぶされる」「知らない人のなんてことない話、のはずなのに」「いつかの私に重ねながら読んでます」......。
匿名の恋愛体験談を集めた本書は10~20代を中心に反響を呼び、版を重ねている。
■「純猥談」とは
誰もが登場人物になったかもしれない、誰かの性愛にまつわる体験談を投稿・共有するサービス。投稿された「純猥談」はすべて、実体験に基づいている。
2019年10月、誰にも言えないバンドマンとの恋愛について綴られた1件の体験談からスタート。マッチングアプリで出会った男女、セックスレスの夫婦など、これまでに投稿された体験談は16000件を超える。
「純猥談」を元に製作した短編映画「触れた、だけだった。」は、YouTubeで約860万回再生を記録(2021年9月7日時点)。「自分にもあったかもしれない、誰かの性愛にまつわる体験談」をコンセプトに投稿されたストーリーをクロスメディアで展開している。
本書は、webサイト「純猥談」に投稿された体験談を加筆・修正して単行本化したもの。
本書に収録された23の「5分で切ないショートストーリー」は、いずれも数ページから長くて10数ページ。たしかに、5分あれば1話読める。
小説形式をとっているため、フィクションかノンフィクションかわからなくなりそうだが、あくまで実体験という。
■目次
もっとどうでもいい男と寝とけばよかった
30になるまで相手がいなければ
一度寝ただけの女になりたくなかった
ざまあみろ、あなたの初めての女は私だ
4年経っても、手を出してこない彼氏のことがけっこう好きだ
恋と呼ぶには利己的すぎた
私たちの過ごした8年間は何だったんだろうね
来世は元気に生まれるからその時は一緒になって下さい
ずっとあなたのファンでした
まだ吸えるはずなのに彼女はタバコの火を消した
知らねえやつとセックスした後の駅前ガストの辛口チゲとレモンサワーは格別だった
いつか回り回って恋人に戻れたら幸せです
私たちはもうすぐ、家族になる
幸せで、幸せすぎて怖くなった
触れた、だけだった
キスマークなんかよりずっと残る印をつけた
短い間だったけど、僕には彼氏がいた
来世はこんな重たい感情など知らずに、誰にでも股を開ける女になりたい
純猥談をよく見ている僕の彼女へ
助演のわたし
好きって言ってくれなかったくせに
大丈夫、私は幸せになれる
初めて、男性がうちの家に来た
身近な人には言いづらい際どい話。でも、誰かに聞いてほしい。「純猥談」は、そんな恋愛体験をした人や今まさに体験している人が、思いのたけを綴る場になっているようだ。
一般的にはタブー視されること(たとえば浮気)も含め、投稿者は自身の恋愛事情や性事情を思い切ってオープンにしている。それゆえ読者は「おおっぴらにはできないけど、自分もこういうことあった(ある)!」と、共感したくなるのだろう。
ここでは、表題作「一度寝ただけの女になりたくなかった」を紹介しよう。
大学4年生のわたしは、卒業後は地元で就職することが決まっていた。ある夜、大学院生のサークルの先輩から着信が入る。「今、サークルの奴ら何人かで集まってるんだけど、うちで呑まない?」。
わたしには1年生の時から付き合っている彼氏がいて、先輩には彼女がいた。それでも面倒見の良い先輩は、わたしに何かと声をかけてくれた。わたしも先輩と過ごす時間が楽しく、アパートへ向かった。
「自分の奥底にある欲望がチラッと顔を出すのは知っていた。知っていて、気づかないふりをしていた。(中略)一度寝てしまったら最後、もう元の関係には戻れないということくらいは知っていた」
サークル仲間が先に帰り、部屋には先輩とわたしだけになった。今にも何か起こりそうな状況だが、ここで何か起こってしまったら、「仲良しの先輩と後輩」の関係を失うかもしれない。
この後、わたしと先輩の間で交わされたやりとりとは......?
今月27日には、「純猥談」書籍化第2弾となる『純猥談 私もただの女の子なんだ』(河出書房新社)が刊行予定。同書は発売前に重版が決定し、シリーズ累計12万部を突破したという。
ネットに投稿された恋愛体験談ということで、投稿者1人1人の打ち明け話を聞いているような読み心地だった。個人的には恋バナも猥談もしなくなって久しいが、やはり、いくつになっても興味をかき立てられる。
「できれば一生共感したくなかった恋愛の体験談」。23のストーリーの中に、あの頃の、または今のあなたのような登場人物がいるかもしれない。
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