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本音は「指」に聞け! 不安・イライラに効く? 「FAP療法」

本当の私よ こんにちは

 「ちょっと指先を押さえてみてください。それだけで、あなたの悩みは消えます」――。なんとも謎めいた書き出しである。

 本書『本当の私よ こんにちは――FAP療法で過去を手放し「今」を生きる』(青春出版社)は、カウンセラー・大嶋信頼さんが20年以上前から精神科医・米沢宏さんらとともに開発し、体系化してきた心の傷の治療法=「FAP療法」の技法と実例を初公開した1冊。

 「FAP療法」とは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療をはじめ、医療・カウンセリングの現場で注目されている「指押し」を使った治療法。

 次のような場面で効果が見られるという。

「上司と部下の板ばさみで困っている」
「自分の体に合ったごはんが食べたい」
「しつこいモヤモヤ感を消したい」
「気になる相手の本音を聞き出したい」
「このツラさ、なんでわかってくれないの?」 etc.

悩み解決の鍵は「指先」に

 「FAP」は「Free from Anxiety Program(不安からの解放プログラム)」の略で、「FAP療法」は日本独自の心理療法の1つ。「心の傷(心的トラウマ)」の治療を追究するなかで1999年に発見、2001年に体系化された。従来の方法では治療が難しかったPTSDの諸症状の改善、恐怖症の克服、パニック障害、強迫性障害、依存症欲求などに効果を示しているという。

 本書は文章がまったく堅苦しくない上に、イラスト・図入り。心理療法の本ということで一見むずかしそうだが、思いのほかとっつきやすい。

■目次
 はじめに 新しい世界への扉をひらく鍵
 1章 本当はどうしたい? 心の鍵をあける技術
 2章 なぜ、同じ悩みを何度もくりかえすのか
 3章 なんだか気になる...「隠れた本音」を知る手法
 4章 しつこい悩みも15分で消えていく! 実践FAP
 5章 FAPはこうして生まれた
 おわりに FAP療法を臨床でどう活かしていくか

 面白いのは、「不思議な現象」「怪しい話」「奇抜な治療法」と著者自身が書いてしまっているところ。「いまだに信じられない気持ちがどこかにあります」としながらも、実際に「指先を押さえるだけで悩みが消える」「悩んでいる人と対面すると自分の指が曲がる」という現象を何度も体験してきたそうだ。

 「半信半疑ながらも、悩み解決の鍵は『指先』にあるのかもしれない......という実感が、たしかにあるのです」

本音がわかる「中指ビンゴ」

 タイトルも斬新だ。

 大嶋さんが考える「本当の自分」とは「"無意識"が、私たちを助けるために、生理反応などによって引き出してくれるもの」。そこで「"無意識"が臓器反応を通じて私たちに伝えようとしている"実際の本音"を、手の指先で受け取れるのではないか」と考えて開発したのが「FAP療法」なのだという。

 説明だけではわかりづらいので、1章の「ごはん選びで本音がわかる! 中指ビンゴ」を紹介しよう。これで「思いもよらないところに"実際の本音"が隠れている」ことを簡単に体験できるという。

 たとえば「お昼に何食べたい?」という場合。頭で考えるのではなく、生理反応を見て本心を探っていく。

■ごはん選びで本音がわかる! 中指ビンゴ

1 片方の手(利き手)をブラブラと振る。
 手首の力を抜き、手のひらをブラブラと振る。

2 振りながら「昼ごはんは食べたほうがいいの?」と自分に問いかける。
 中指が反応したら「ビンゴ」。「食べたほうがいい」が"実際の本音"となる。
 反応例は、指がしびれる、つっぱる、固まる、ピクッと曲がるなど。

3 「どこで?」「何を?」と問いかけ、同様に中指の反応を確かめる。

「オカルトチックな不思議な現象」

 2章では「5本の指それぞれに感情が出る」という興味深い話も。「1分で気持ちがスッキリしていく指押し」を紹介しよう。たとえば「夫がムカつく!」という場合。

■1分で気持ちがスッキリしていく指押し

1 手の小指を押さえながら、頭のなかで「夫のことが気になる」と4回唱える。
 押さえる場所は爪の生え際の両脇。

2 終わったら、頭のなかで「夫のことがムカつく!」と思ってみる。
 ムカつきが消えた場合、夫に対して「怒り」があったことがわかる。
 消えない場合は別の指で調べていく。

 人差し指は「憎しみ・恨み」、中指は「孤独」、薬指は「見捨てられ不安」、親指は「身体的苦痛」の意味があるそうだ。

 「中指ビンゴ」を試してみたが、反応しているのかよくわからなかった。「本当に効くの?」という読者の心を読むかのように、本書の意図を書いている。

 「オカルトチックな不思議な現象であることはわかっています。(中略)まだまだ学問的な裏付けは脆弱です。でも、この方法が役に立つ人がいるのならばぜひ知ってほしい」

 ちなみに、指の反応の感度を上げるには、とにかく食べるものをFAPで決めることだという。

 4月から新しい環境に身を置き、だんだん「本当の私」を見失いつつある人も多いだろう。世にも不思議なこの「FAP療法」なら、楽しく実践できて気分転換になりそうだ。


■大嶋信頼さんプロフィール
 心理カウンセラー。株式会社インサイト・カウンセリング代表取締役。米国・私立アズベリー大学心理学部心理学科卒業。周愛利田クリニック、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室室長、株式会社アイエフエフ代表取締役を経て、インサイト・カウンセリングを立ち上げる。カウンセリング歴26年、臨床経験のべ9万件以上。著書累計50万部超。

■米沢宏さんプロフィール
 精神科専門医・指導医。ジャパンEAPシステムズ取締役、顧問医。筑波大学大学院修了。医学博士。認定産業医、臨床心理士。産業精神保健、うつ病の職場復帰支援、依存症問題などを専門とする。

■泉園子さんプロフィール
 臨床心理士、公認心理師。株式会社インサイト・カウンセリング室長。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士前期課程修了。株式会社IFF電話相談室室長、IFF相談室室長を経て現職。



 


  • 書名 本当の私よ こんにちは
  • サブタイトルFAP療法で過去を手放し「今」を生きる
  • 監修・編集・著者名大嶋 信頼、米沢 宏、泉 園子 著
  • 出版社名青春出版社
  • 出版年月日2020年11月 1日
  • 定価1,870円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・192ページ
  • ISBN9784413231732

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