「やる気」がわかない時は、程度の差はあっても、だれにもあるはず。本書『「やる気が出ない」が一瞬で消える方法』(幻冬舎)は、とくに、そうした落ち込みを努力や根性で克服しようとしている人たちに、それはおやめなさいと呼びかける。それだと、かえって悪化を招きかねないという。
やる気がなくなる、ちからが入らず動けなくなる―など、無気力を感じる状態は、心のなかで「バグ」が発生しているようなものという。パソコンなどの機器が動かなくさせるエラーのこと。プログラムにバグがあればシステム全体に狂いが生じてパソコンが起動しなくなる。それと同じように、心の中に一つのバグがあるだけで、その人自身が起動しなくなり生活に支障をきたし、思わぬ健康被害に悩まされることになる可能性もある。
問題は、コンピューターの場合のように簡単にバグつぶしができないこと。「バグが生じる原因は、その人が普段意識しないところに隠れていることが多いため、自分ではバグの原因に気づけないことがほとんど」というから厄介だ。
そのバグつぶしの方法を示したのが本書。著者の大嶋信頼さんは、東京都内で心理カウンセリングを行う会社を経営する心理カウンセラー。FAP(Free from Anxiety Program)療法と名づけた短期療法を開発し多くのケースに当たり、これまで7万件を超える臨床を行ってきたという。20万部超のベストセラーになった『「いつも誰かに振り回される」が一瞬で変わる方法』(すばる舎、2016年9月刊)など著書多数がある。
ヒトも動物も生きている間、心地いいか/悪いか―の判断を続けながら過ごしているという。心のなかに「快/不快」のスイッチというより、ヒトの場合はオフモードもあるかもしれないから、自動車のシフトレバーがあるような感じか。
ネコなどのペットを飼っていればよく分かるが、動物は心地いいと感じたことは行うが、悪いと感じれば行わない。ところがヒトの場合はなかなかそうストレートにはいかない。人によっては「快」と感じながらも周りを気にして我慢する、あるいは「不快」と感じても責任あるからやめられない―など「快/不快」の感覚がねじれた格好で過ごさねばならぬことが往々にしてある。
オフモードはあるとしても、ヒトの生活のなかではそこにシフトが合うのは休日のひと時か。たいていは「快/不快」が交互に連続するなかいる。それは「0→1→0→1...」と流れてコンピューターを動かす二進法のバイナリ―コードに例えられると著者。バグが発生するとこのコードの狂いを生じさせマシンの動きを止めてしまうが、ヒトの場合も「快/不快」の流れのなかで不具合である「無気力」というバグが生まれ、動かなくなってしまうことがある。
本書ではバグを作る要因として「万能感」「他者から受ける嫉妬」「脳のネットワーク内のトラブル」を詳述。「万能感」の人は、物事を自分基準で判断する癖がついており「快/不快」を感じたままに従わず、「快」を無理やり中断したり、「不快」ならオフにすればいいものを、なぜか耐え忍んでしまったりする。しかも「万能感」の人は、自分がそれを持っていることになかなか気づかないケースが多く、事態をさらに複雑してしまう。
「他者から受ける嫉妬」によるバグの例として著者は、上司の嫉妬攻撃により動けなくなったビジネスマンの例を紹介している。部下のビジネスマンのことを「自分より優れた能力の持ち主」と察知した上司は「嫉妬の発作」を起こしビジネスマンに嫌味をいい、無視してみたり、提出された企画をボツにする。だんだんとやる気が低下するのを感じたビジネスマンだが、それは、自分の心の弱さが原因だと思っていたという。著者によると、ビジネスマンは「上司は嫌な奴」ということと「自分はダメ人間」ということを別の問題として考え、二つの悩みを抱える格好で悶々としついには動けなくなってしまったものだ。著者がこのビジネスマンに、彼の無気力についてなぞ解きをすると、最初は理解ができなかったという。
「やる気が出ない」ことや「無気力」な感じに心当たりがありながら、その原因が分からないという人はとくに、一読の価値がありそうだ。
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