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いまベストセラーの鉄道地図帳は何が凄いか!

レールウェイマップル 全国鉄道地図帳

 いまアマゾンランキングの日本地図ジャンルで1位、交通関連ジャンルで1位、鉄道ジャンルで2位になっているのが、本書『レールウェイマップル 全国鉄道地図帳』(昭文社)だ。品切れになり、8日(2021年2月)増刷された。

 「鉄道地図帳なんか、これまでもいろいろあっただろう」と思うのは素人だ。従来の鉄道地図帳は、地図としてはデフォルメが甚だしいものが多かった。手帳の後ろの方に付録で付いている地下鉄マップを思い起こしてほしい。1ページ内に東京や大阪の稠密な地下鉄網を収めるため、地理的な正確さは無視している。

 本書の特徴はまず正縮尺であることだ。昭文社の代表的な道路地図「マップル」の正統な地図を下書きとして鉄道路線が描かれている。しかも縮尺1/250,000を全国一律(北海道地域は1/300,000、離島地域は1/350,000)で収録。日本全国を収録している鉄道地図帳のなかでは、他に類を見ない大きな縮尺だ。鉄道がない離島地域もおおよそ収録しているため、「日本全図」としても活用できる。

 次に豊富な情報量だ。現役鉄道路線は全路線を掲載、全駅、信号所や車両基地、鉄道博物館などの鉄道関連施設や、ロケ地や景観などの情報は多彩なアイコンでプロット表示している。

戦後からの「廃線」を図示した鉄道ヒストリーマップ

 3つ目にこれが重要なのだが、戦後からの廃線も図示していることだ。現在の鉄道事情と過去からの変遷が同時に楽しめる。廃止路線のほかに、鉄道地理、鉄道遺産、路面電車、旧線、旧名も図示し、日本の発展とともに歩んだ鉄道の歴史を、地図を辿りながら読み解くことができる。

日本各地かつての鉄道路線網の充実ぶり

 BOOKウォッチで昨年(2020年)紹介した「鉄道本」を本書を参照しながら読み返してみた。

 『地形図でたどる日本の風景』(日本加除出版)には、「『私鉄王国時代』の加賀私鉄網」という項目がある。石川県南西部の加賀市から小松市にかけての地域には、高度成長期まで数多くの私鉄路線が各方面を結んでいた。山代温泉や片山津温泉などへは、北陸本線から北陸鉄道のこれらの電車に乗り換えるのが常だった。

 北陸鉄道粟津線、山代線、片山津線、山中線、小松線、尾小屋鉄道が本書に見える。北陸新幹線が金沢まで延びて敦賀への延伸工事が佳境のいま、少しでも残っていたら、大きな観光資源になっていただろうと夢想した。

 また、「門前町・琴平に集まった鉄道」の項目には、金刀比羅宮には4本の鉄道がひしめいたと書いている。

 本書を見ると、香川県坂出市からは琴平急行電鉄、琴平参宮電鉄丸亀線(丸亀市経由)、多度津町からも同多度津線が伸びている。いずれも1950~60年代に廃止された。

 現在はJR土讃線と高松琴平電気鉄道の2本が残るにすぎないが、瀬戸内海の各港から海上交通安全や商売繁盛を祈願して金刀比羅宮へ参拝した人の流れが見えるようだ。

 もう1冊、『続・秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本』(光文社新書)には、まだ鉱山が健在だった頃の鉱山鉄道の写真が収められている。石炭を運んだ釧路臨港鉄道、銅鉱石などを運搬した秋田県の小坂鉄道などだ。

 また、木材を運んだ草軽電鉄(群馬県・長野県)、北恵那鉄道(岐阜県)なども。まだ一次産業が華やかな時代、地方には多くの資源があり、それを運ぶ鉄道があり、旅客利用する人々がいた。本書の各地の地図を眺めていると、そうした「昭和の光景」が目に浮かんできた。

 正縮尺の鉄道地図帳としては、『JTBの鉄道旅地図帳(JTBパブリッシング)』もあり、こちらは電車の写真も豊富に収められ、楽しい。小学生から使える。

  • 書名 レールウェイマップル 全国鉄道地図帳
  • 監修・編集・著者名企画・編集 昭文社編集部
  • 出版社名昭文社
  • 出版年月日2020年11月27日
  • 定価本体3200円+税
  • 判型・ページ数B5判・428ページ
  • ISBN9784398653116

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