仕事で感じるストレスは人それぞれだが、「各方面からの板挟み」は、おそらく誰にとっても嫌なものだろう。
中間管理職はその最たる例だ。無理難題を押しつける上司と、指示に従わない部下の間でうまく立ち回れず、双方に振り回されてしまうというのは、特に管理職になりたての人が陥りやすいケースでもある。
中間管理職に限らず、立場の違う各方面の調整役は、他人の気持ちを推し量ったり、他人の感情を正面から受け止めざるを得なかったりする場面が多い。結果、常に他人の言葉や態度に一喜一憂している状態、つまり「他人に振り回されている状態」になりがちだ。
■「人を責める」と人格を乗っ取られる
『「いつも誰かに振り回される」が一瞬で変わる方法』(大嶋信頼著、すばる舎刊)は、心身共に消耗するこの状態からいかに抜け出すかをテーマに書かれている。
本書によると、他人に振り回されやすいのは、普段から自分の感覚よりも相手の感覚に注目してしまう人だという。「共感力の高い人」という言い方もできるかもしれない。この性質がある人がまず気をつけるべきは「相手を責めないこと」だ。
「どうしてあなたは〇〇なんだ」と相手を責めるのは、相手に注目し、相手の気持ちに自分を重ねることでもある。
これは、言ってみれば相手に“憑依”することだ。相手に感じる不快感が増幅すればするほど、相手の感覚になって相手と同じ言動をとってしまい、いつしか自分本来の性質を見失ってしまう。
■相手の言うことを真に受けない
また、相手に振り回されないための大前提として、「他人の言葉を真に受けないこと」も大切だ。
真面目な人ほど、相手を理解しようと思うあまり、一言ひとことを正面から受け止めようとする。こうなると、自分の感情が相手の感情に左右されやすくなってしまう。
相手の言い分は真摯に聞くべきだが、感情的なセリフまで真に受けることはない。相手が怒っていようと、不機嫌だろうと、その感情の責任はあなたにあるわけではないのだ。
■下手に出るのは逆効果
中間管理職のように、対人折衝の多い立場では、自分の本音を出しにくい。その結果、相手はより我を押し出してくるということになりがちだ。その意味では良かれと思ってやっている「本音を言わない」は、精神衛生的にも仕事的にも決していいことではない。
本書でも、勇気を出して本音を言うことは、イライラしたりストレスが溜まる状況を一変させるものだとして、なかなか勇気が出ない人に向けて、本音を出す秘訣を紹介している。
対人関係や上下関係からは自由になれなくても、対人関係からのストレスはやり方次第で軽くしたり、なくしたりすることができる。本書ではそのための考え方や実践的な方法まで、心理カウンセラーの立場から丁寧に解説されているので、コミュニケーション上の問題を抱えている人は参考にしてみてはいかがだろう。
(新刊JP編集部)
『「いつも誰かに振り回される」が一瞬で変わる方法』(すばる舎刊)