「粋を食す　江戸の蕎麦（そば）文化」花房孝典著

江戸の食といえば、蕎麦。しかし蕎麦は、いわゆる「江戸前」の鮨（すし）や天麩羅（てんぷら）、鰻（うなぎ）とは異なり、その産地は信州や東北など他の地域が知られている。にもかかわらず、蕎麦はなぜ江戸の食の代名詞のひとつになり、江戸っ子たちにもてはやされるようになったのか？

本書は、「江戸の蕎麦」の成り立ちから庶民に広まった背景や食事情などを、あたかも蕎麦を手操るようにひもとく江戸の蕎麦雑学事典だ。二八そばの正体とは？　蕎麦切りの始まりなど蕎麦にまつわる謎をはじめ、「砂場」「藪」「更科」の老舗蕎麦屋の誕生、落語と蕎麦、歌舞伎と蕎麦、蜀山人蕎麦ばなしなどさまざまな切り口でその奥深さを探る。「蕎麦こそ、江戸っ子の最も愛した"粋"を代表する食物であり、"江戸の粋"を今に伝える重要な文化財」と著者は評する。

蕎麦好き、蕎麦通のうんちく満載、蕎麦とともに楽しみたい1冊。