「共産主義の誤謬（ごびゅう）　保守政党人からの警鐘」福冨健一著

 　昨年、日本共産党は民進党と統一戦線を組み、永田町では新たな自共対決の始まりか、という声さえ聞かれた。野党の中で存在感を増す共産党だが、意外にも政界における共産主義の理解は決して深くないという。
　自民党政務調査会部長代理である著者が言うには、自民党では「社会主義と共産主義の区別も曖昧な人がいるし、保守主義や社会主義に興味を示さない人もいる」そうだ。著者の経歴はユニークで、政党の離合集散にともない民社党、民主党に属した経験を持つ。それゆえ各党の事情に通じ説得力がある。
　また、著者は河合栄治郎（産経新聞に連載された評伝でもおなじみかもしれない）の門下・関嘉彦に政治思想を学んでおり、その知見からヘーゲル、マルクスといった共産主義思想のルーツや、ハイエク、ポパーらの保守主義、日本共産党の綱領などをわかりやすく解説した。原著を読まずとも、ポイントをまとめて、初学者にもやさしい1冊。