「読書をしない、苦手、好きではない」とか「読みたい本がない」という人に向けて、バラエティプロデューサーを自称する角田陽一郎さんが書いたのが本書『読書をプロデュース』(秀和システム)である。
角田さんは1970年生まれ。東京大学文学部西洋史学科を卒業。TBSテレビに入社、「さんまのスーパーからくりTV」、「中居正広の金曜日のスマたちへ」など数多くのバラエティ番組を担当。2016年に退社し、さまざまなプロデュースを手掛ける傍ら、東京大学大学院で学業にも打ち込んでいる。著書に『最速で身につく世界史』、『人生が変わるすごい「地理」』などがある。
角田さんが提唱するのは「バラエティ読み」だ。本からいろいろな面白さを見つけ出す読み方だという。本を読まない理由として挙げられるのは、つらいから、時間がもったいないから、楽しくないから、書き手が知らない人だから、ネットの方が便利だから、の5つの理由だという。
これに対して、どれも感情的な理由だと退け、読書しない人たちに本を「面白い」「楽しい」と感じてもらえるように「バラエティ読み」を勧める。そのポイントは次の5つだ。
1 ジャケ買いでいい 2 途中でやめていいし、併読したほうがいい 3 積読(つんどく)でいい 4 感想文も書かない、メモもしなくてもいい 5 速読しない
本を選ぶことそのものをバラエティ感覚で楽しみ、自分なりにエンターテインメント化すればいいというのだ。そのためには表紙やタイトルで選び、自分の感性を磨くことを勧める。「ジャケ買い」だ。
だから第1章まで読んで、つまらないと思ったら、読むのをやめて本棚に預けてもいい。そして並行して違う本を併読することを勧める。併読はマルチタスクのトレーニングにもなる。
積読でも本棚にはタイトルがわかるように並べておくのがコツだ。角田さんは手持ちの本をすべて本棚に並べてから、アイデアが湯水のように湧き出てくるようになり、番組作りに役立ったそうだ。
そもそも積読なんて出来ないという人は、書店や図書館を自分の書斎にすればいいという。
そもそもなぜ、角田さんは読書を勧めるのか。それは読書をすることで、「やりたいこと」が見つかるからだという。どんな人にとっても読書はほぼメリットしかない、と強調する。
東大に受かったのも、TBSに入り、バラエティプロデューサーになったのも『世界の歴史』(中公文庫、全16巻)を読んだからだ、と個人的な体験を披露している。
こうして読書のメリットを押さえた上で、第3章では「仕事でもっとも大事な『想像力』は小説で磨ける」と説く。小説こそビジネスに役立つ、想像力が足りないと、いい結果を出すことも難しい、と説明している。人はストーリーがあるから、モノを買うというのだ。
ここまでは一種の読書論である。すでに読書好きであるBOOKウォッチの読者に役立つと思ったのは「第5章 読む本に迷ったら、まず新書を手にしよう」だ。新書が「バラエティ読み」にマッチしていると考える著者が、岩波新書、中公新書、講談社ブルーバックス、講談社現代新書の編集長4人と対談し、それぞれの編集方針とおすすめ新書を聞いている。その中から何冊か紹介しよう。
岩波新書の永沼浩一さんが待望の復刊と挙げているのが、本間順治『日本刀』(1939年刊行、2019年復刊)だ。前回の重版が戦時中の1943年だったから、実に76年ぶりの復刊だ。『刀剣乱舞』のブームで8割が女性読者だという。
中公新書の田中正敏編集長は、呉座勇一『応仁の乱』、水島治郎『ポピュリズムとは何か』、吉田裕『日本軍兵士――アジア・太平洋戦争の現実』などを挙げている。
また、講談社ブルーバックスからは藤岡換太郎『フォッサマグナ』、山崎晴雄・久保純子『日本列島100万年史』など、講談社現代新書からは河合雅司『未来の年表』、鴻上尚史『不死身の特攻兵』などが挙げられた。
BOOKウォッチで紹介した本も多く、心強い思いをした。
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