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さまざまな「女二人」の形を切り取った短編集

私に似ていない彼女

 加藤千恵さんの本書『私に似ていない彼女』(ポプラ社)は、さまざまな「女二人」の微妙かつ繊細な距離感、関係性を切り取った8作品を収録した短編集。

 小説家の山本文緒さんは「人生に本当に必要なのは、気が合わない人だ! 共感ごっこに辟易した人に読んでほしい」と、本書の帯にコメントを寄せている。

 ここで「共感ごっこ」という言葉が引っかかった方は、友人関係に「共感」は必須だと思い、関係を維持するために「共感」している自分を演じたことがあるのではないだろうか。

ゾクゾク感を維持して読める

 本書は「滅亡しない日」「非共有」「切れなかったもの」「お茶の時間」「あなたは恋をしない」「正直な彼女」「神様の名前」「皺のついたスカート」の8話からなる。友情は永遠に続くと思っていた女子高生二人。死ぬまで恋愛しないと決めた小学生と独身の叔母。宗教を捨てた女子大生と宗教を信じつづける知人。決別した母と十数年ぶりに顔を合わせた娘......。

 一冊とおして、「何かが起きる」という期待とゾクゾク感を維持したまま読めた。ものによって無難に事が進んでいるように見えたとしても、終盤に意外な展開が用意されていると伝えておきたい。

 ここでは、評者が特に共感した「非共有」と、背筋が凍った「切れなかったもの」を少しずつ紹介しよう。

「非共有」
 小説家のわたしと翻訳家の淳子。自由業、独身というくくりで、小説家としての苦労も失恋の悲しみもすべてを共有し、分かち合えると思っていた。しかし、違っていた。

 「わたしは自分が失望しているのを自覚する。......楽しさを共有するには最高の相手だ。......けれど、今、苦しさを共有できない」

 同じ場所にいて、共通点が多く、気が合う相手でも、見てきた景色や培ってきた感性が完全に一致することはない。そう割り切ることも必要なのだろう。

「切れなかったもの」
 二人暮らしをしている中高年の姉妹。二人とも働いておらず、姉は派手な格好で出かけて行き、妹は姉のリクエストの料理を作る。一体どんな事情を抱える姉妹かと思ったが、最後にとんでもない秘密が明かされる。

 「ずっとわたしの理解を超えていた姉は、そんなときですら、自分とは別の生き物だった」

 「そんなとき」がどんなときか、本書を読めば背筋が凍るだろう。8話の中で最大のインパクトを残す作品だ。

人間関係の選択肢を広げる

 本書は、人間関係に対する本音を「あたし」「わたし」という一人称の視点から包み隠さず言葉にしている。本書の8通りの人間関係は、こうあるべきという理想からはみ出している。相手にこういう感情を持つのは仕方ないし、こういう形でもいいと、人間関係の選択肢を広げてくれる。共感でも断絶でもないところをグルグルとめぐる主人公たちの心境に、身に覚えのある方も多いのではないか。

 加藤さんは1983年北海道生まれ。2001年に短歌集『ハッピーアイスクリーム』で高校生歌人としてデビューした。自身のサイトで「多く書いてきたテーマもありつつ、今まで書いたことがないような設定も多く取り入れることができ、力の入った一冊となりました」と、本書に込めた思いをつづっている。

 本書収録作品の初出は『asta』、『小説TRIPPER』、文庫など。単行本化にあたり加筆・修正された。「正直な彼女」は、BOOKウォッチで紹介した女性作家6人による短編集『リアルプリンセス』(ポプラ文庫)に収録されている。

  • 書名 私に似ていない彼女
  • 監修・編集・著者名加藤 千恵 著
  • 出版社名株式会社ポプラ社
  • 出版年月日2019年11月12日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六判・230ページ
  • ISBN9784591164433

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