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全寮制女子校の4人が行き着く「友情」とは?

友達未遂

 宮西真冬さんの本書『友達未遂』(講談社)は、タイトルと表紙が印象的だ。書店で面陳列されていたが、4人の少女が醸し出す雰囲気にやや不穏なものを感じた。帯には「全寮制女子校で次々と起こる事件」とあり、狭い世界で女子高生が繰り広げるドロッとしたものが描かれているのかと想像したが......。

「マザー制度」のある全寮制女子校

 本書の舞台は、全寮制の女子校である星華高等学校。創立130年の歴史があり、規律に厳しいことで有名。街から随分離れた山奥に立地している。同校には、新入生を「チャイルド」、3年生を「マザー」と呼び、寝食を共にしてルールやマナーを教える「マザー制度」がある。

 本書は第一章から第五章と終章から成る。物語は4人――茜(新入生・桜子のチャイルド)、桜子(3年生・茜のマザー)、千尋(美術コース3年生・真琴のマザー)、真琴(美術コース新入生・千尋のチャイルド)――の目線から語られる。

それぞれに抱える事情と葛藤

 茜の母は、茜を祖父母の家に置いて失踪した。どこにも居場所がなく、茜は全寮制の同校へ入学した。茜のマザーを務める桜子は、模範生であり、生徒会長。皆の憧れの的である。しかし、茜は桜子に対して「自分に自信があるようなしぐさも、言動も、何があっても楽しそうな笑顔も、他人のことにやたらと首を突っ込むところも、何もかも」嫌っている。

 茜の洗濯物が汚されたり、茜の机に<「死ね」>と書かれた手紙が入っていたり、千尋の描いた絵が破られていたりと、不審な事件が立て続けに起こる。真っ先に犯人だと疑われた茜に対して、桜子は自分のことのように泣き、かばった。茜の桜子に対する感情は変化していき、「血縁も何もない二人が本当に何かを築くことができるのだろうか」と信じたいと思うようになる。

 桜子の母は、かつて「星華のマドンナ」と呼ばれ、伝説となっている。桜子はいつしか、マドンナの娘を演じるようになっていた。「自分の意見や気持ちが、いつの間にか行方不明になり、探すこともやめてしまっていた」桜子は、「自分の意見をしっかり持って、やりたいことをやる」千尋を羨ましく思う。

ここから先をどう生きていくか

 千尋、真琴も含めて4人それぞれにトラブルが起こり、外的な要因によって、本来の自分を抑え込んだり、こうあるべきと偽ったりしている。しかし、一連の事件をきっかけに、4人は自分の置かれている状況を客観的に見つめ直し、ここからどう生きていくのかを考えるようになる。

 帯には、評論家や書店員からの本書を絶賛するメッセージがビッシリ詰まっているが、どこまで感情移入できるかは個人差があると思った。それでも、4人の内面を繊細に捉えた描写は見事であり、自分が高校生の頃に味わった感情が蘇ってきた。本書の結末の先に、4人はどんな大人になっていくのか。

 著者の宮西真冬さんは、1984年山口県生まれ。2017年にメフィスト賞受賞作『誰かが見ている』でデビュー。18年に第2作目『首の鎖』を刊行し、本作は3作目となる。

  • 書名 友達未遂
  • 監修・編集・著者名宮西 真冬 著
  • 出版社名株式会社講談社
  • 出版年月日2019年4月22日
  • 定価本体1600円+税
  • 判型・ページ数四六判・290ページ
  • ISBN9784065139653
 

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