読むべき本、見逃していない?

自動車業界の必読書 トヨタの内幕小説第二弾

  • 書名 トヨトミの逆襲
  • サブタイトル小説・巨大自動車企業
  • 監修・編集・著者名梶山三郎 著
  • 出版社名小学館
  • 出版年月日2019年12月 2日
  • 定価本体1700円+税
  • 判型・ページ数四六判・285ページ
  • ISBN9784093865616

 覆面作家の梶山三郎氏が2016年10月に発表した『トヨトミの野望 小説・巨大自動車企業』(講談社)は、トヨタ自動車の内幕をフィクションで再現したと評判になった。元社長の奥田碩氏がモデルとも言われ、創業家との確執が描かれていた。トヨタ本社に近い愛知県内では「禁書」の扱いと梶山氏は語り、「名古屋界隈の書店からすべて消えた」「自動車業界に近いある経営者が"99%事実"と言った」など業界を震撼させた。

空振りに終わった燃料電池車

 本書『トヨトミの逆襲 小説・巨大自動車企業』(小学館)は、その続編にあたる。前作のラストは、トヨトミ自動車の豊臣統一社長が「2030年までにガソリンエンジンのクルマをゼロにする。すべて水素カーに替える」とぶち上げる場面で終わった。その後いったいどうなったのか?

 水素を燃料とするFCV(燃料電池車)を発売したものの見事に空振り。800万円前後という高級車並みの価格。燃料を補給する水素ステーションも増えず、大失敗に終わった。

 このあたりの描写は、現実にトヨタ自動車が発売した燃料電池車「MIRAI」がたどった軌跡をなぞっているかのようだ。今年(2019年)の東京モーターショーでトヨタは、「MIRAI」の後継車を発表したが、量産化にはまだ課題が残っているとされる。

 ハイブリッド車プリウスの成功により、大きく利益を伸ばしたトヨタ自動車だが、自動運転への対応、さらなるエコカーの開発などが課題となっている。

 本書も舞台がCASE、つまりC=Connected:コネクテッド、A=Autonomous:自動運転、S=Shared:ライドシェア、E=Electric:電気自動車――と呼ばれる4つの技術の大波が押し寄せている現在に移っている。この数年で大きな変化があったのだ。

 CASEの波は「21世紀の産業革命」と呼ばれ、アメリカの巨大IT企業が先頭を走っていると言われる。果たしてトヨトミ自動車はこの荒波にどう立ち向かうのか。

追従する経済記者たち

 前作は誰が書いたのか犯人捜しが行われ、出入り禁止になったジャーナリストもいたという。

 本書の冒頭も名古屋市郊外の高級住宅地にある豊臣統一社長宅への経済記者の「朝回り」から始まる。創業家の長男で生まれながらのお坊ちゃまの統一は、気に入らないことがあれば切れやすく、「これが日本を代表する企業の社長だというのだから呆れてしまう」という人物。記者たちも忖度、追従する者たちが多く、鋭い質問をすると統一が機嫌を損ねるため、記者同士が牽制しあう。

 日本商工新聞(日商新聞)名古屋支社の自動車担当サブキャップ・渡辺泰介は、周りの記者たちのぬるい質問にしびれを切らし、トヨトミの電動車への参入はあるのかと切り込む。

 「僕に解を求めるなよ」と機嫌を損ねる統一。すぐに広報から日商新聞名古屋支社に電話がかかり、即刻編集部長が名古屋から豊臣市のトヨトミ本社に謝罪に向かった。泰介は以後、統一邸の朝回りに行くことはなく、その年の秋の人事異動で東京本社産業情報部に異動、意外なことに自動車担当をはずされなかった。

 評者は長く名古屋の新聞業界にいたため、トヨタ自動車のマスメディアへのグリップの強さをよく知っている。ある社は、トヨタ本社と同社役員の自宅に配達される新聞に限り、特に印刷状態がいいものを「特送」していた。トヨタの広告がきれいに印刷されていることをアピールするためである。逆に言えば、その他一般読者宅には印刷状態がそれほどでもない新聞が配達されていたことになる。この「ズル」があるとき露見し、その社は相当なペナルティーをトヨタから課せられた。

 梶山氏は「トヨタの日本のメディアへの広告出稿費は巨大。そのため忖度が生まれ、真実がきっちり伝えられない」と語っている。

日経記者がトヨタで「研修」し話題に

 そう言えば、日本経済新聞の元トヨタ担当記者である経済部次長がトヨタ自動車で半年間「研修」するという人事が最近話題になった。出向ではなく、研修という扱いで同社は問題なし、としているが、メディア業界や自動車業界からはそれで公正な報道ができるのか、と疑問の声があがっている。

 トヨタは最近、テレビCMで盛んに宣伝している自社メディア「トヨタイムズ」をヤフーのような媒体に育てようとしており、主要メディアにタイアップ企画などの提案を持ち掛けているという。それをにらんだ「人事」なのだろうか。

 よほどトヨタ自動車に気に入られた記者なのだろう。そういう記者もいれば、梶山氏のように覆面をかぶり、事実に近い小説を書くことでトヨタを批判する記者もいる。

 本書では前作同様、トヨトミ社内の技術開発の迷走ぶりや人事をめぐる暗闘がつまびらかに描かれている。自動車業界の人にとって必読の書となるだろう。ちなみに「僕に解を求めるなよ」は、怒ったときの豊田章男・トヨタ自動車社長の口ぐせでもあるそうだ。

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