「80年代ブームの起点は1982年にあった!」というサブタイトルで、1982年前後の若者文化に光を当てたのが、本書『平凡Special 僕らの80年代』(マガジンハウス)だ。なぜ、1982年かと言うと、早見優、石川秀美、堀ちえみの「花の82年組」というアイドルの存在や松本隆、大瀧詠一、佐野元春らシティポップが流行、前年のソニーウォークマンⅡの発売など、80年代を彩るヒトやモノの影響を挙げている。
戦後、「明星」(集英社、現「Myojo 明星」)とともに平凡出版(現マガジンハウス)の「平凡」は、芸能人の情報を盛り込んだ月刊誌として人気を博した。「平凡」は、1987年に休刊したが、本書には「平凡」のアーカイブから多数公開している。
巻頭は早見優と石川秀美の親友コンビのハワイロケの写真。若い二人の笑顔がまぶしい。続いて堀ちえみの北海道ひとり旅。網走駅から今は廃線になった釧網線に乗り込み、古い客車でまどろむ姿が写っている。最近口腔がんを公表して闘病中だが、10代の表情が初々しい。
早見優の本書のためのインタビューが載っている。仲のよかった石川秀美との思い出について、「そのまま今日に至る感じ。今年もお正月にハワイで会ったんですが、全然変わってないんですよ。この写真のまんまでかわいい」と答えている。今も松本伊代、堀ちえみ、三田寛子ら82年組とはよく連絡を取り合っているという。「80歳までがんばって、同期会をしたい」とも。
作詞家・松本隆のロングインタビューも読みどころがあった。82年の一番の思い出として、この年1月に発売された松田聖子の「赤いスイートピー」を挙げている。前年の「白いパラソル」からかかわるようになり、「ティーンのアイドルから大人のシンガー」にすることを目指したという。当時のレコードジャケットも多数掲載されているから、懐かしさを覚えるファンも多いだろう。
音楽関係では、サードアルバム「SOMEDAY」で、この年ブレイクした佐野元春が当時掲載された「anan」の取材写真とともに、その頃の思い出を語っている。「まごころ」という歌詞について、泥臭い言葉かもしれないけど、「新しいメロディを当てれば、力強く新鮮に響くということ。確信的な実験だった」と語っている。私事で恐縮だが、この頃、社会人になりたての評者も「SOMEDAY」を移動中の車内ではよくかけていた。「赤いスイートピー」とともに、2000年代までカラオケでよく歌ったから、自分でも想像以上に82年の歌の影響を受けていたのかもしれない。
ソニーのウォークマンⅡのほか、各社の小型オーディオを家電蒐集家の松崎順一さんのコレクションで紹介している。ほかにはホンダのシティ、角川映画、初代タイガーマスク、NECのPC-9801などが登場している。
こうしてみると、ヒトや商品は入れ替わったが、今に通じるものが、この頃登場したことがわかる。70年代とは大きな断層があるような気がする。
平凡出版時代の「遺産」を生かした企画だ。76年に創刊された「POPEYE」の82年の表紙が載っているが、あまり違和感がない。上野と原宿のショップの店長が、82年風のファッションを披露している。なんか評者のカジュアルとあまり変わらない。歌だけでなくファッションも82年をひきずっていたのか、と本書を読み、新たな発見をした。
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