CS放送のディスカバリー・チャンネルやナショナルジオグラフィック・チャンネルを見ていると、秘境ものが実に多い。普通のドキュメンタリーのほかに、サバイバル系のジャンルも確立されている。水はおろか、衣服すら与えられないまま、無人島などに放り出されて1週間ほど生活する、過激なものもある。欧米人の「探検」にかける情熱は、日本人の比ではない。
「ニューヨークタイムズ絶賛の全米ベストセラー冒険絵本ついに日本上陸!」というキャッチフレーズで登場したのが、本書『世界秘境マップ』(飛鳥新社)だ。
同紙は「最高にスリリングで想像力あふれる探検ガイド」と推薦している。
世界47か国の100か所の「秘境」を1か所1ページずつ、迫力のあるイラストで紹介している。どれも日本では、あまり知られていないスポットが多い。
たとえば、南極大陸にある「天然の滝・血の滝」。真っ白な雪と灰色の岩山だらけの殺風景な南極の中で、1か所だけ、5階くらいの高さから赤い滝が流れている。200万年ほど前、テイラー氷河は湖の上に浮いていた。微生物が岩を食べるうちに、湖の水に鉄分が溶け出し、今、その水が氷河の裂け目から流れ出し、酸化して赤くなるのだ。湖にすむ微生物を科学者たちは研究している。「はるか遠くの氷でできた惑星にも、似たような生物がいるかもしれないのだ」と著者は想像力をかきたてる。
ジャンルは自然ばかりではない。イタリアのシチリア島にある「不気味な地下墓地(カタコンベ)」には8000体ものガイコツが安置されている。葬儀用の服を着た元修道士たちの遺体だ。こうした歴史にちなんだものもあれば、カンボジアの竹で出来た自家製の列車「ノーリー」など人間が作ったさまざまな機械などもある。幅広い視点に感心するばかりだ。
著者の1人、ディラン・スラスは、ニューヨークタイムズのベストセラーリストで1位を獲得した『Atlas Obscura』の共著者の1人。世界各地の信じられないような場所を見つけ紹介する同名のプロジェクトを立ち上げ、クリエイティブ・ディレクターを務めている。
日本からは伊豆諸島の青ヶ島を「島の中の島」(カルデラ)と山形県湯殿山の即身仏(ミイラ)を取り上げている。
巻末には「旅の目的別さくいん」があり、古代の偉業、驚きの動植物、高いところと低いところ、地下への旅、驚きの科学などのコースがある。
日本の児童絵本とは一味違う、「子どもを一人前の大人として扱う」視点と記述が新鮮だ。親が読んでも面白い。
イラストを描いたジョイ・アンはテレビ・アニメシリーズ「アドベンチャー・タイム」のキャラクターデザインを手がけたアーティスト。品のある落ち着いた色調のイラストを眺めているだけで楽しい。
こういう本を親から買ってもらう子どもは幸せだと思う。好奇心が刺激され、きっと科学や歴史、人間への関心がふくらむだろう。
BOOKウォッチでは『世界「奇景」探索百科』(原書房)なども紹介している。
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