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生活者は「受け手」から「創り手」へ 平成の終焉でマーケティングも変わる!

生活者の平成30年史

 平成があとひとつき余りで終わろうとしている。この30年間で人々の生活や価値観が、どう変化したかをデータで検証したのが、本書『生活者の平成30年史』(日本経済新聞出版社)である。

 博報堂生活総合研究所は、1981年に設立されたシンクタンク。生活定点調査、消費予報調査、家族調査、子ども調査、高齢者調査などさまざまな長期時系列調査を行っている。政府などの統計を含め、多くの調査データを104のグラフで表示、解説するというスタイルで本書は書かれている。

 日本の総人口のグラフは何度見ても心臓に悪い。2008年(平成20年)の1億2808万人をピークに激減し、約100年後の2115年には5056万人と4割にまで減少すると予測されている(国立社会保障・人口問題研究所『人口統計資料集』『日本の将来推計人口』)。今後グラフは右肩下がりだ。

 収入のうち貯蓄に回る割合を表わす家計貯蓄率も1985年には16.2あったが、2016年にはわずか2.2に(内閣府『日本経済2017-2018』)。収入は増えない、貯められないという生活実感が裏付けられている。

平成終盤は平静な「常温社会」

 同研究所が、26年間行っている生活定点調査から浮かび上がった現在の人々の時代認識を「常温社会」というキーワードで総括している。

 
 生活レベル認識 意識の上では根強く「中流」
 消費意欲 消費にも節約にも向かわず「定位安定」
 世の中認識 この先の世の中は「良くも悪くもならない」
 身近な暮らし認識 高まる「身近な幸せ」の感度

 平成の終盤、新しい時代を迎えようとしている今、社会に大きな動きがなく期待も持てないなら「自分自身で変化を起こそう」「決まり切ったやり方ではなく、自分なりの方法で暮らしのなかに幸せを生み出そう」という生活者が増えていくのでは、と予測している。

 「いつか」「どこか」「だれか」ではなく、「イマ・ココ・ワタシ」の価値観へシフトしているとみている。そこで提唱しているのが、モノ、コトの次の消費スタイル「トキ消費」だ。ハロウィンやフェス、ライブ、クラウドファンディングなど「同じ志向を持つ人たちと一緒に、その時(トキ)、その場でしか味わえない盛り上がりを楽しむ消費」と定義している。人々の関心が「所有」、「体験」から「存在」へ移ったという理論づけだ。

 「トキ」の共通要素は非再現性、参加性、貢献性だという。ビジネスへのヒントとして、手作りのワークショップ、商品の生き残りキャンペーンなどの例を紹介している。

すべてタダが当たり前の子どもたち

 子どもたちの変化もいろいろな指標で浮かび上がったが、面白いと思ったのは、ゲーム、音楽、マンガなどをほぼすべて無料で楽しむのが当たり前になっている「タダ・ネイティブ」の世代が育っている、という指摘だ。ただで十分。その代わり、「立ち会う」ためには惜しまない。「支える」ためには惜しまない、という行動様式があるという。

 高齢者についても新しいとらえ方をしている。74歳以下の若い方の高齢者を「長寿社会の【第2世代】」と名付け、その特徴を「退かない、頼らない、気負わない」と分析している。

 夫婦関係についての記述がなるほどと思った。「夫婦別姓ならぬ夫婦別生」という見出し。「夫婦でもプライバシーは尊重するほうがよい」90.7%、「配偶者の異性の友人には干渉しないほうがよい」80.1%という一方で、「夫婦で共通の趣味を持ちたい」49.7%。「お互いへの依存心よりも自立心に目が向いているようです」と書いている。

 ここではデータと分析をおもに紹介したが、本書にはマーケティングや商品開発のヒントや手がかりがいっぱいだ。そのための研究所であり、レポートな訳だが、長期時系列調査のデータは、同研究所のホームページで一般公開している。登録不要・無償でエクセル形式のデータファイルをダウンロードして利用できる。   

  • 書名 生活者の平成30年史
  • サブタイトルデータでよむ価値観の変化
  • 監修・編集・著者名博報堂生活総合研究所 著
  • 出版社名日本経済新聞出版社
  • 出版年月日2019年2月20日
  • 定価本体2000円+税
  • 判型・ページ数四六判・261ページ
  • ISBN9784532176549

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