2017年に株式会社KADOKAWAより刊行された『君は月夜に光り輝く』が、今年(2019年)刊行された続編『君は月夜に光り輝く +Fragments』(ともにメディアワークス文庫)との累計で60万部を突破した。本編と続編の帯にはそれぞれ「読む人すべてが涙した圧倒的感動作」「日本中が涙した『君月』のその後がわかる待望の続編!」とある。どうやら「君月」が話題になっているらしいことを、遅ればせながら今頃知った。
著者の佐野徹夜さんは、1987年京都府生まれ。同志社大学文学部卒業。『君は月夜に光り輝く』で電撃小説大賞「大賞」を受賞し、デビュー。他の著書に『この世界にiをこめて』『アオハル・ポイント』がある。著者名を見て一瞬、誤変換かと思ったが、「よく徹夜している」から「徹夜」にしたという。
映画「君は月夜に光り輝く」(監督・脚本 月川翔/主演 永野芽郁、北村匠海)が今年3月15日に公開された。また、マツセダイチさんによるコミック版は月刊誌「ダ・ヴィンチ」で連載中。著者自身が「デビューから二年、次々に夢が叶っていく毎日でした」と振り返っているが、デビュー作でここまで叶えるケースは滅多に見ない。
『君は月夜に光り輝く』では、高校1年生の卓也が友人・香山に頼まれて、「発光病」(はつこうびょう)で入院中のクラスメイト・まみずのお見舞いに行く。「発光病」とは、月の光に照らされると体が発光する不治の病。死期が近づくと光は強くなっていく。
3年前に大切な存在である姉を亡くした卓也は、それ以来どこかなげやりに生きていた。余命ゼロのまみずに姉の面影を感じた卓也は、まみずの「死ぬまでにやりたいこと」を代行し、その話を聞かせることを約束する。
離婚した理由を父親に聞きに行く、メイド喫茶でのアルバイト、亀の飼育、バンジージャンプ、文化祭の演劇でジュリエット役...支離滅裂に見えるこれらの願いは、まみずが「生きることへの執着を、一つ一つなくして」いくためのものだった。数々の願いを叶え、二人の心が通い合っていく一方で、まみずの死はすぐそこまで迫っていた。
『君は月夜に光り輝く +Fragments』では、本編で語り尽くせなかったまみずと卓也のエピソード、卓也の友人・香山のまみずへの初恋、大学生になった卓也と香山、31歳になった卓也が描かれている。本編・続編をあわせて読むことで、物語が厚みを増し、より感情移入することができる。
「あとがき」から、著者の等身大の姿が浮かび上がってくる。
「この世界は、理不尽で、辛くて、酷いことに満ち溢れています。死にたくなるなんて、それは当たり前のことだ、と僕は思います。それでも、生きていこう、そう思ってもらえるような小説を、僕は書きたかった」
「つたないところもあるかもしれませんが、今までの自分の全てを、この小説に込めました」
「大切な初期衝動を忘れずに、これからも頑張ります」
作品全体を通して、親しい友人に語りかけるような、親密で率直な言葉が並ぶ。過剰に技巧が凝らされていないからこそ、かえってすんなりと読者の心に入ってくる文章、そんな印象を持った。
『君は月夜に光り輝く』は電撃小説大賞「大賞」を受賞した同作に加筆・修正したもの。『君は月夜に光り輝く +Fragments』は「電撃文庫MAGAZINE」掲載作品に加筆・修正したものと、描き下ろしたもの。
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