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川村元気が12人の巨匠に仕事術を学ぶ

仕事。

 山田洋次、沢木耕太郎、杉本博司、倉本聰、秋元康、宮崎駿、糸井重里、篠山紀信、谷川俊太郎、鈴木敏夫、横尾忠則、坂本龍一――何と豪華な顔ぶれだろう。12人の巨匠による「仕事の教え」と世界を面白くする「仕事のヒント」が詰まったのが、川村元気さんの『仕事。』だ。本書は2014年に集英社より単行本として刊行され、18年に文藝春秋より文庫化された。もともとは13年から14年にかけて『UOMO』(集英社)の対談連載「仕事の学校」に掲載されたもの。

 「生きているほとんどの時間、僕らは仕事をしている。だとしたら、僕は金のためではなく、人生を楽しくするために仕事をしたいと思う。心から『仕事がしたいです』と叫びたい。そんな仕事を僕は『仕事』ではなく『仕事。』と呼びたい。仕事に丸をつけて肯定し、人生を楽しくするために働く。それが『仕事。』だ」

 本書のまえがきには、川村さんの仕事観とともに、不安や不満、理不尽な状況や人間関係のストレスを抱え、変わらなければと思っても勇気が持てないという、等身大の川村さんが書かれている。川村さんが12人の巨匠に「僕と同じ年の頃、何を想い、何を考え、どう働いていたのか。何に苦しんだり、何を楽しんだりして、ここまでやってきたのか。その果てに、何を見つけたのか」と訊ね、一人一人から名言を引き出していく。

山田洋次「批判する頭のよさより いいなぁと惚れこむ感性が大事です」
沢木耕太郎「僕はあらゆることに素人だったし 素人であり続けた」
杉本博司「やるべきことは 自分の原体験の中にしかないんです」
倉本聰「世間から抜きん出るには どこかで無理をしないといけない」
秋元康「時に判断を間違えるのは仕方ない。大切なのは、間違いを元に戻す力だ」
宮崎駿「何でも自分の肉眼で見る時間を取っておく。作品を観ることと、物を見ることは違うんです」
糸井重里「仕事は人間の一部分でしかない。だから、どうやって生きていくかを面白くやれ」
篠山紀信「世界をどうにかしようなんて、おこがましい。大事なのは受容の精神です」
谷川俊太郎「人類全体の無意識にアクセスできる仕事であればいいんじゃないかな」
鈴木敏夫「最近はみんな丁寧に物をつくるから 完成したときには中身が時代とズレちゃう」
横尾忠則「自分が崩落していく感覚の先に 新たな道を見つけることも多いと思います」
坂本龍一「勉強とは 過去の真似をしないためにやるんです」

 川村さんは1979年横浜生まれ。上智大学文学部新聞学科卒。『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『君の名は。』などの映画を製作。12年に発表した初小説『世界から猫が消えたなら』は140万部を突破し、米国、フランス、ドイツ、中国、韓国、台湾などで出版される。14年に発表した絵本『ムーム』はRobert Kondo&Dice Tsutsumi監督によりアニメ映画化され、全世界32の映画祭で受賞。本欄で紹介済みの2作目の小説『億男』は、18年に映画化された。

 国内外で評価されている映画プロデューサーの川村さんが、仕事の何に悩んでいるのか気になる。また、12人の巨匠が偉業を成し遂げる前の、キャリアの根っこから語っていることに好奇心をそそられる。ちょっと聞きづらい質問もストレートに投げかけ、「その言葉を、できるだけ生の状態で紹介していきたい」としているとおり、巨匠の人柄、語り口、表情まで伝わってくる自然な文体で書かれている。本書は年齢や職業を問わず、ぜひ読んでいただきたい。いつまでも手元に置いておきたい1冊になるだろう。

BOOKウォッチ編集部 Yukako)
  • 書名 仕事。
  • 監修・編集・著者名川村 元気 著
  • 出版社名株式会社文藝春秋
  • 出版年月日2018年9月10日
  • 定価本体690円+税
  • 判型・ページ数文庫判・288ページ
  • ISBN9784167911430
 

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