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「君の名は。」の川村元気、「三億円宝くじ」に挑む

億男

 社会現象となった映画「君の名は。」など、大ヒット作を手がける映画プロデューサー・川村元気の小説『億男』(文藝春秋)は、2015年本屋大賞ノミネート作で、累計56万部を突破した。2018年3月に文庫化され、10月19日には映画「億男」(監督 大友啓史 /主演 佐藤健、高橋一生)が公開される。メガヒットを連発する映画プロデューサーの著書、インパクトのある短いタイトル、実力派俳優による映画化、という点に惹かれた。

 主人公・一男は、失踪した弟の借金を肩代わりした。お金の問題から、妻は娘を連れて家を出て行った。一男は別居生活を続けながら、昼間は図書館司書として働き、夜はパン工場のベルトコンベアの前でパン生地と格闘する。ところがある日、一男の人生で最大の事件が起きる。宝くじで三億円(日本のサラリーマンが生涯に稼ぐお金)が当せんしたのだ。喜びも束の間、一男は混乱し、不安にかられる。

「人生に必要なもの。それは勇気と想像力と、ほんの少しのお金さ。」
(チャーリー・チャップリン)

 この言葉を教えてくれた、一男の親友・九十九(つくも)。大学の同級生で、同じ落語研究会に所属していた。ベンチャーを立ち上げ成功し、今ではタワーマンションに住む大金持ちとなった九十九。15年前、大学卒業間際に旅したモロッコでのある出来事により二人の関係は唐突に終わったが、相談できるのは彼だけだと、一男は九十九に会いに行く。

 「せっかく三億円も手に入れて、現金を見ないで死ぬなんてばかばかしい」と、「現金を実際に見て触ることのできる人生」を九十九にお勧めされた一男。一万円札は1グラム。30キログラムもの大荷物を携えて、一男は再び九十九のもとへ。しかし、一男は酔いつぶれ、目を覚ますと、九十九は一男が持参した三億円とともに消えていた――。

 大富豪の九十九が、なぜ一男のお金を盗って失踪したのか。音信不通だった15年間で九十九に何があったのか。「お金と幸せの答え」とは――。ソクラテス、ドストエフスキー、福沢諭吉、ビル・ゲイツ...数々の偉人の言葉にヒントを得ながら、一男のお金をめぐる30日間の冒険が始まる。お金があれば全ての願いが叶う?お金があれば本当に幸せ?答えは人それぞれだろうが、本書はあえてこの難しいテーマを深掘りしている。読みやすいお金の哲学書とも言えそうだ。

 著者の川村元気は、1979年横浜生まれ。上智大学文学部新聞学科卒。「君の名は。」の他に「電車男」「告白」「悪人」「モテキ」「おおかみこどもの雨と雪」「怒り」などの映画を製作。11年、優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。12年『世界から猫が消えたなら』(マガジンハウス)で作家デビュー。140万部のベストセラーとなり、映画化もされた。今年3月、初の脚本作品となる映画「ドラえもんのび太の宝島」公開。他著に『四月になれば彼女は』(文藝春秋)などがある。

 ちなみに、お金の重さ・サイズを知る、一万円札を半分に破る、億万長者セミナーへ通う、競馬をするなど、一男がした一連の体験は、お金ととことん向き合うために著者自身が試みたことだという。ヒットメーカー・川村元気が次に着目するのは何か。その動向に注目したい。

 (BOOKウォッチ編集部 Yukako)
  • 書名 億男
  • 監修・編集・著者名川村 元気 著
  • 出版社名株式会社文藝春秋
  • 出版年月日2018年3月10日
  • 定価本体680円+税
  • 判型・ページ数文庫判・256ページ
  • ISBN9784167910266
 

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