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認知症と思ったら、まず老人性の「うつ」を疑え

先生! 親がボケたみたいなんですけど……

 中高年になり友人たちと集まると、親の病気や介護のことがよく話題になる。中でも親の認知症に悩む人が多い。本書『先生! 親がボケたみたいなんですけど......』(祥伝社)は、認知症との正しい付き合い方を教えてくれる本だ。

 著者は和田秀樹さん。東大医学部を卒業し、高齢者専門の総合病院の精神科や東大付属病院などで高齢者の臨床に長く取組み、現在は国際医療福祉大学心理学科教授、和田秀樹こころと体のクリニック院長を務める。灘高から東大理三に進学した経歴から一時、受験にかんするテーマで雑誌やテレビによく出ていたが、本業は精神科医だ。

 和田さんは「認知症らしく思えても実際には違うところに原因がある場合」があるという。ひとつは「がんをはじめとしたさまざまな内臓疾患」だ。体の調子が悪くなり行動もこれまで通りとはいかなくなる。それ以上に多いケースが老人性の「うつ」だと指摘する。見過ごされることが多いので、「なんか変だな」と思ったら、まず「うつ」を疑いましょう、と呼びかけている。

 基本的なことだが、認知症には4つのタイプがある。

1 前頭側頭型認知症 初期症状には「言語障害」「人格の変化」が強く出る。
2 レビー小体型認知症 初期症状には幻視やうつ症状が現れる。
3 アルツハイマー型認知症 もっとも多いタイプで、「記憶障害」を発症する。
4 脳血管性認知症 脳梗塞などが原因で発症。症状も変化するので「まだら認知症」とも呼ばれる。

 悲観してはいけないが、素人判断は禁物なので専門医に相談することを勧める。認知症は、どのタイプでも進行性であり完治させることはできない。だが、進行を遅らせる方法もあるので、諦めないように和田さんは訴える。「認知症は一部の能力が欠けるだけ」として、前向きに臨んだ方がいいそうだ。

 小さくなった前頭葉を刺激し続ければ「気持ちや意欲の老化」を防ぐことはできるという。落語や音楽などエンターテインメントに触れさせることを勧める。

 親との接し方についてもいろいろアドバイスしている。頭ごなしに否定しない。「そうだね」は魔法の言葉、否定する時は、「うん。でもね」。

脳トレの効果は疑問

 和田さんは、流行の「脳トレ」については懐疑的だ。「脳トレのスキルアップは日常生活のレベルアップへの波及効果はない」といい、否定的な論文が次々に出ているそうだ。それよりも買い物や料理、洗濯など日常生活の中での作業が重要だと主張する。

 親が認知症になったかと思うと子供はショックを受ける。評者も入院中の母親が見当識になり、認知症になったかと悲観したが、薬の副作用だったことが分かり、元に戻ったということがあった。だが、できることはどんどん少なくなり、施設に入ったままだ。さまざまな葛藤はあるが、本書の「いま現在の親」を受け入れる、「親に機嫌よく生きてもらうこと」というメッセージを読み、力づけられた思いがする。

 認知症に限らず、年老いた親とどう向かい合うか、参考になるアドバイスに満ちている。  

  • 書名 先生! 親がボケたみたいなんですけど……
  • サブタイトル「老年精神医学」が教える認知症との付き合い方
  • 監修・編集・著者名和田秀樹 著
  • 出版社名祥伝社
  • 出版年月日2018年11月10日
  • 定価本体1400円+税
  • 判型・ページ数四六判・207ページ
  • ISBN9784396616694
 

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