NHKの教育テレビは、2011年6月にEテレと名称変更してから「ソフト路線」を進めてきた。てっとり早く、親しみをもってもらおうと起用したのが、お笑い芸人だ。これまでMCを務めたのは、有吉弘行、くわばたりえ、藤井隆......と枚挙にいとまがない。
現在放送中の番組では「ろんぶ~ん」の田村淳、「ねほりんぱほりん」の山里亮太、又吉直樹に至っては、すっかりEテレの常連となり「又吉直樹のヘウレーカ!」と冠番組まで持っている。
今年(2018年)春の番組改編では、単なるMCから「先生」に昇格する番組まで登場したから「芸人路線」もとうとう行き着くところまで行った感じ。その番組とはずばり、「芸人先生」(月曜午後11時~11時30分)だ。毎回、芸人が企業に赴き、ネタ作りの裏話やトークのテクニックを披露する。別室で営業コンサルタントの和田裕美さんが講義内容を分析・解説する。さらに講義を受けた社員が実際に商品やサービスのアイデアや企画を出し合う。売れた芸人は、さすがにさまざまな知恵やノウハウを持っていて、評者も感心することが多かった。
7月末で終了、もったいない、もっと続けてほしいと思っていたら、番組をそのまま書籍化した本書『NHK 芸人先生』(宝島社)が出た。
芸人と協力企業、テーマ、教訓を少し紹介すると、雰囲気がわかるだろう。
バイきんぐ×タカラトミー 創る切り口講座 設定は「ベタ」を選べ ナイツ×しまむら 売り込むな!買いたいと思わせろ!講座 買いたくなるキャッチコピー 相席スタート×東洋水産 男と女講座 歩み寄ってあげて! ちょうどよい距離感 サンドウィッチマン×カルビー 切り口講座 プレゼンでは冒頭が大事
たとえば、サンドウィッチマンは、「開始1分以内に本題へ!」「冒頭で気を引く工夫を」と教える。さらに和田裕美さんは、具体的な日付を提示するなどして、契約を取り交わすクロージングへ持っていくテクニックを披露している。
番組に登場したビジネス用語を抜粋すると、こんな調子だ。あなたはどれだけわかるだろうか。
田舎戦略(お母さん戦略)、オセロ効果、陰ちょい足し法、系列位置効果、松竹梅理論、潜在的顧客、デザイン思考、ニッチ戦略、バンドワゴン効果、ビジネスエスノグラフィ、ピボット思考、ファジー理論、FACT理論、YESセット話法......。
芸人は「最強のビジネスマン」かもしれない。人に「伝える技術」の宝箱が、ここにあると思った。ただし、こうしたテレビで大活躍している人の大半は、ある種の天才である。誰でも真似できるわけではない。
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