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「スマホ依存」で入院治療中の子どもがいる

スマホに負けない子育てのススメ

 情報機器の進化について「ムーアの法則」というのがあるそうだ。それによると、機器の性能は1年半で2倍、3年で4倍、6年で約16倍、10年で約100倍になる。

 そうした猛スピードの性能アップに最前線に位置しているのがスマホだ。もはや私たちの生活に切っても切れないツールとなった。本書『スマホに負けない子育てのススメ』(主婦の友社)は、スマホが子育てにどのような影響があり、それを克服して上手に付き合うにはどうすればいいか分かりやすく示したものだ。

いじっていないとイライラする

 著者の諸富祥彦さんは明治大学文学部教授。教育学を専門とする。『子育ての教科書 0歳から大人になるまで親がすべきこと』『「子どもにどう言えばいいか」わからない時に読む本』『スマホ依存の親が子どもを壊す』など教育や子育て関係で多数の著作がある。

 スマホが大変便利な機器であることは誰もが承知している。一方で、スマホにどんな弊害があるのか、そのあたりの研究は余り進んでいない。とにかく本格的に登場してから日が浅い。にもかかわらず世界中で使われている。

 著者は、スマホ依存の何が怖いかというと、「脳の状態がおかしくなってしまうことです」と警告する。スマホを使っているつもりなのに、使われている。スマホなしでは不安になる。一定時間いじっていないとイライラする。そうした状態は、薬物依存、アルコール依存、パチンコ依存、買い物依存と変わりなく、「入院治療が必要なほど深刻な病理現象」とみる。すでに国立病院機構久里浜医療センターでは、スマホやゲーム依存の子どもたちが入院治療しているという。

いじめや人間関係のトラブル

 スマホの弊害についての数少ない研究では、仙台市の教育委員会の調査が有名だ。約7万人についての調査をもとに川島隆太・東北大学加齢医学研究所所長らが分析した。家庭で一日2時間以上勉強していても、スマホを4時間以上やっている子どもは、ほとんど勉強していない子どもより成績が悪い、など驚くべき実態が明かされた。

 本欄ではすでに川島先生の『スマホが学力を破壊する』 (集英社新書)を紹介、J-CASTニュースでも川島先生へのインタビューを掲載している。

 諸富さんもこの仙台市の調査結果をもとに「子どものスマホ利用は一日1時間以内にさせること」を強調している。

 スマホで怖いのはこうしたネット依存だけではない。仲間外れやネットいじめなど、人間関係のトラブルだ。LINEに代表されるさまざまなSNSで友達とつながっていることが、逆に人間関係を複雑にする。すぐに返事をしなければいけないという暗黙のルールのようなものがあって、手放せない。

「乳幼児」への影響が心配

 本書が特に注意を呼び掛けているのは「乳幼児」への影響だ。親が持っているスマホをいつの間にかいじっている乳幼児が意外に多い。手放そうとしない、どこかに電話をかけていた、動画を閲覧していた、勝手に写真や動画を撮っていた、投げつけるなど乱暴行為をしていた、知らないサイトにアクセスしていたなどなど。

 スマホに小さいうちから馴染んでいると、語彙力が伸びるのか、それとも発達が遅れるのか。このあたりはまだ調査がないのでわかっていない。つまり、「どんな影響があるのか、全く未知数」というのが現状だ。

 本書では、スマホの最大のリスクは「依存性、中毒性」と繰り返している。大人でもそういう人は少なくないから、自制心や自律力の弱い子供なら、なおさらだろう。

 スマホに振り回されない人間になるにはどうすればいいのか。著者は「スマホに使われる人間ではなく、スマホを使う人間になる」ことを強調している。これは他の依存症の場合と同じだろう。異なるのは、他の依存症と違って、子どもが依存症になる可能性が高いということだ。子どもをスマホ依存症にしないために、あるいは依存症から抜け出せるように、親のなすべきことは多い。本書は文字も大きく内容も平易。子どもと一緒に読んで考えてみてはどうだろう。

  • 書名 スマホに負けない子育てのススメ
  • 監修・編集・著者名諸富 祥彦 著
  • 出版社名主婦の友社
  • 出版年月日2018年9月 3日
  • 定価本体1400円+税
  • 判型・ページ数四六判・192ページ
  • ISBN9784074325962

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