読むべき本、見逃していない?

陛下は靖国神社を潰そうとしている!?

  • 書名 靖国神社が消える日
  • 監修・編集・著者名宮澤 佳廣 著
  • 出版社名小学館
  • 出版年月日2017年7月27日
  • 定価本体1300円+税
  • 判型・ページ数四六判・222ページ
  • ISBN9784093798945

 靖国神社が大変なことになっている。神社のトップの小堀邦夫宮司が「陛下は靖国神社を潰そうとしている」と発言していたことが明らかになり、退任することになったのだ。長い神社の歴史の中でも前代未聞の出来事だろう。

 きっかけは「週刊ポスト」2018年10月12・19日号の記事だ。6月に神社内で行われた会合で、小堀宮司が異例の皇室批判を繰り広げていたことを報じていた。ネットでも公開され、音声データまで明かされて「極めて不穏当な言葉遣いの録音内容が漏洩」と神社側も認めざるを得なかったようだ。

「富田メモ」と「A級戦犯合祀」の真相

 そこで思い出したのが本書『靖国神社が消える日』だ。週刊ポストを発行している小学館から昨年7月に出た。当時も週刊ポストで、「靖国神社元No.3が『A級戦犯合祀手続きは間違いだった』と告白」と大々的に報じられていた。

 著者の宮澤佳廣さんは1958(昭和33)年生まれ。父は小さな神社の宮司。国学院大学の神道学科を卒業し、神社本庁で教化部長、渉外部長を歴任した。さらに神道政治連盟事務局長、神社新報社編輯長を経て靖国神社に移り、総務部長などを経てナンバー3の禰宜も務めるなど2017年6月までで11年間、靖国神社に奉職した。経歴だけ見ると、まさに靖国神社の「中の人」だが、どうして「消える日」などというタイトルの本を書くことになったのか。

 本書をざっと読んで気づくのは、不動の聖地のように思われがちな靖国神社がいろいろ問題を抱えていること、著者の宮澤さんが非常にまじめな人で、悩む場面が多かったことだ。中でも興味深いのは、週刊ポストが取り上げた「A級戦犯の合祀問題」だ。本書の第七章で「『富田メモ』と『A級戦犯合祀』の真相」として詳述している。

信ぴょう性に疑問をはさむ余地はない

 よく知られているように、「富田メモ」は2006(平成18)年7月20日、日経新聞がスクープしたもの。元宮内庁長官の富田朝彦氏のメモに、1978年のA級戦犯の靖国神社合祀について、昭和天皇が不快感を示されていたということが書き残されていた。「だからあれ以来参拝していない。それが私の心だ」という天皇の強い言葉が記され、各方面に衝撃を与えた。

 宮澤さんは「『富田メモ』の内容は事実で、その信ぴょう性に疑問をはさむ余地はない」と考えた。したがって「昭和天皇の不快感」を事実と受け止めて、対応を図るしかないと。

 「合祀すべきではない」という言葉には、二通りのことが考えられるという。一つは、「将来にわたってA級戦犯は祀られるべきではない」。もう一つは「あのような時期に祀るべきではない」。宮澤さんは、天皇の真意は後者にあると考えて、その立場で意見書を作成し、上司に提出したという。

 「靖国神社は国家護持の形に戻した方がいい」というのが著者のスタンスだ。そして、「靖国の英霊祭祀の主宰者はだれなのか」と問いかけ、「天皇が祀るべき祭神を、宗教法人となった靖国神社の宮司の自由な判断で祀ることなど許されるはずもない」という「祭祀奉仕者のみが実感する苦痛にも似た感情」を記す。

退職する二週間前に急きょ「口止め」誓約

 本書では様々な局面で、著者の現状に対する痛切な思いが語られる。たとえば靖国にはびこる秘密主義。それは「靖国の公共性」を維持するうえで決してプラスにならないと指摘する。著者が退職する二週間前に急きょ、社内で知り得た情報を第三者に漏えいしないことを誓約させる手続きが新設されたという。

 しかし、今回、はからずも内部の会議での発言が漏えいした。その内容を週刊ポストで読むと愕然とする。小堀宮司はこのように語ったという。

 「陛下が一生懸命、慰霊の旅をすればするほど靖国神社は遠ざかっていくんだよ。そう思わん? どこを慰霊の旅で訪れようが、そこには御霊はないだろう? 遺骨はあっても。違う? そういうことを真剣に議論し、結論をもち、発表をすることが重要やと言ってるの。はっきり言えば、今上陛下は靖国神社を潰そうとしてるんだよ。わかるか?」

 さらにこう続けたという。

 「あと半年すればわかるよ。もし、御在位中に一度も親拝(天皇が参拝すること)なさらなかったら、今の皇太子さんが新帝に就かれて参拝されるか? 新しく皇后になる彼女は神社神道大嫌いだよ。来るか?」

 発言は、ナンバー2である権宮司など職員10人が出席した会議の場だったという。生々しい内容が流出したということは、この発言に対して内部で異論があったことを推測させる。宮澤さんに「解説」を聞いてみたい気がした。

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