今から40年近く前、アルビン・トフラーが『第三の波』(1980年)で情報化社会の到来を予言した。ようやくポケットベルが出た頃で、まだファックスはなかった時代。それでも情報化という言葉は一躍流行語となり、評者の世代は入社試験の面接で、まだ見ぬそのビジョンを無邪気に語ったものである。なるほど情報化社会は実現した。当時存在すら想像できなかったパソコンや携帯電話、スマートフォン、インターネットなどの情報ツールやサービスが、当たり前のように普及するようになった。未来を予測することはこのように難しいものである。
40年後はともかく20年後はどうなっているのだろうか? 本書『未来の稼ぎ方』(幻冬舎新書)は、経営コンサルタントの坂口孝則さんが、2019年から2038年までの20年間に、さまざまな業界で何が起きるのかを具体的に予想して書いたものだ。各年度で一つの業界を取り上げ、売れそうな商品やビジネスチャンスを挙げている。
たとえば来年2019年はコンビニ業界を取り上げている。セブン-イレブンが沖縄に進出、大手3社が47都道府県すべてに出店するからだ。全国で約6万店となり飽和状態になる可能性が高いという。坂口さんはシニアへの買い物代行・配送サービスなど「ネオ御用聞きとしてひたすら便利を追求する」稼ぎ方に今後の方向性を見出す。
2020年には自動運転車が本格始動する。自動車はハードからソフトへと変換した時のビジネスモデルの構築が必要になると指摘している。
この後もいくつかピックアップすると、
2024年 アフリカで富裕層が急増 2026年 若者マーケティングのキーは、SNSと愛国になる 2029年 中国が人口のピークを迎える 2033年 30%が空き家に 2034年 AIが大半の仕事を軽減化、あるいは奪う 2036年 老年人口が3分の1、死者数も最大に
1年が1章でそれぞれのキーワード、業界ごとに書かれているので読みやすい。なぜ、その年に取り上げるのか? 坂口さんは「その業界が、かならずしもその年に書かれる絶対性も必然性も、じつはありはしない。さらに20の業界を選ぶ行為そのものが、私の判断によるもので、客観性を欠いている。いわば、本書は壮大な自分語りといっていい」と書いている。電機メーカー、自動車メーカーの資材部門で働いていた自分の体験なども文中に織り交ぜている、異色の未来予測本だ。しかし、さまざまな統計・データをもとにし、データ源もアクセス可能で客観性、検証可能性は十分だ。取り上げている業界は少ないが、読者も今後、違う業界に転職する可能性もあるだろうし、違う業界の取り組みがヒントになることもあるだろう。
著者は、過去の未来予想の本はほとんどが当たっておらず、「本書も同じ道を歩むだろう」と控えめだ。無味乾燥な叙述の多い類書にはない「自分語り」が評者には面白かった。本書の最終章にあたる2038年は「世界じゅうで教祖ビジネスが大流行する」となっている。教祖と言っても「等身大のカリスマ」という意味だが、著者にもその資質は十分感じられる。
本欄では、これまでに未来予測本として、『未来の年表』(講談社現代新書)と続篇『未来の年表2』(同)を紹介している。
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