細田守氏が監督・脚本・原作を手がけた映画「未来のミライ」が、2018年7月に公開された。本作は88(5月現在)の国と地域で配給が決定していて、第71回カンヌ国際映画祭開催期間中の「監督週間」にアニメーション作品として唯一選出された。本書『未来のミライ』(株式会社KADOKAWA)は、細田監督による原作小説。
物語の舞台は、横浜市磯子区の一軒家で、中庭に小さな白樫の木がある。建築家のおとうさんは、芸術家肌でマイペース。出版社に勤めるおかあさんは、完璧主義者。長男の訓(くん)ちゃんは、甘えん坊の4歳。飼い犬のゆっこ(オス)。そこに妹が生まれ、ミライと名付けられた。
おかあさんに「これから仲良くしてね。なにかあったら、守ってあげてね」と言われたくんちゃん。ところが、おとうさんもおかあさんもミライちゃんの世話で手一杯で相手をしてくれない。「今は幸せじゃない」と思ったくんちゃんは、腹いせにミライちゃんの顔を引っ張ったり、おもちゃで頭を叩いたりする。
両親に怒られ、無視されたくんちゃんは、中庭に出て「赤ちゃん好きくないの」と泣き叫ぶ。すると、中庭が全く別の光景に置き換わる。そこに現れた男は、くんちゃんの気持ちを「嫉妬」と言い当てる。以前はおとうさんとおかあさんから大事にされていたが、くんちゃんが生まれてから「愛を奪われた男」になったと言う。
くんちゃんがミライちゃんの顔にお菓子を並べて笑っていた時、中庭が熱帯の植物で埋め尽くされ、少女が現れた。「おにいちゃん、わたしの顔で遊ぶのやめてよ」と言う少女は、中学生になった未来のミライちゃんだった。
時をこえる冒険が、次々と繰り広げられていく。見知らぬ町の雨上がりの裏通りで、しゃがんでいる少女。薄暗い工場の一角で、オートバイを作っている青年。無人駅のホームで、声をかけてくる男子高校生。くんちゃんが出会う彼らは、いつの時代の誰なのか。冒険を終えた時、くんちゃんはどんな気持ちになるのか。ミライちゃんは赤ちゃんに戻るのか――。
「オニババっ。おかあさん好きくないのっ」というくんちゃんの寂しさ。「はあっ、まーた怒っちゃった......いい親でいてあげなきゃと思いながら、できた試しなどない」というおかあさんの後悔。子ども心と親心の両方を捉えていて、親子で楽しめる作品。ドラマティックな映像や音楽が思い浮かぶような、イキイキとした描写に惹かれた。
細田監督は、1967年富山県生まれ。91年東映動画(現・東映アニメーション)に入社。アニメーターおよび演出として活躍後、フリーになる。「時をかける少女」(2006年)、「サマーウォーズ」(09年)を監督し、国内外で注目を集める。11年には自身のアニメーション映画制作会社「スタジオ地図」を設立。「おおかみこどもの雨と雪」(12年)、「バケモノの子」(15年)はともに大ヒットとなった。
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