映画「万引き家族」は、2018年5月に第71回カンヌ国際映画祭で最高賞の「パルムドール」を受賞し、6月に全国公開された。様々な家族の形を描き続けてきた是枝裕和氏が監督・脚本・編集を手がけ、リリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林らが出演した。是枝監督は本作について「10年くらい自分なりに考えて来たことを全部この作品に込めようと、そんな覚悟で臨みました」と語っている。
本書『万引き家族』(宝島社)は、是枝監督自らが書き下ろした小説。発売後間もなく10万部を突破し、是枝監督は「気合いを入れて書き下ろした甲斐がありました」とコメントしている。映画では語り尽くせなかった人物の背景や感情が描かれているため、映画と小説の両方をチェックしたい。
「万引き家族」というタイトルから、物騒な印象と温かい印象を同時に受けた。本書は、「犯罪」でしかつながれなかった「家族の絆」が描かれている。世間が「万引き」と呼ぶ犯罪は、柴田家の家計を支える大切な「仕事」だった。柴田家は、祖母の初枝、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀がいる。そこに、近隣の団地の廊下に締め出されていた幼いゆりを治が連れて帰り、6人家族となる。これはいわゆる「誘拐」だが、あざだらけのゆりを家に返すことはできない。信代は「誘拐」ではなく「保護」だと考える。
店先の商品は「誰の物でもない」と、治は「万引き」を正当化する。祥太は治と一緒になって「万引き」を繰り返すが、あるとき微かな罪悪感が芽生える。そこから少しずつ、社会の規範をすり抜けて何とかつながっていた一家は引き裂かれていく。
「どんな酷い人たちの集まりでも、ニセモノでも、...家族と呼べる人たちはあそこにしかいなかったのだ」彼らは家族というものがたやすく手に入らないことを知っているからこそ、家族のつながりを切実に求めている。「犯罪」の上に成り立つ一家の生活は、その土台自体が脆く、あってはならないものだが、そこにある彼らなりの「家族の絆」が見てとれる。
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