左派やリベラルが支持した「民主党」政権が有権者に見放されたのは、いっこうに景気が回復しなかったから、つまり経済政策が失敗したからと考えている人も多いのではないだろうか。
日本の左派は経済を語ることは仕事ではないと思っている。また「経済成長は必要ない」と考えている人も多い。欧州の左派が唱える「反緊縮」運動を紹介してきた、英国在住の保育士・ライター・コラムニストのブレイディみかこ氏が、こう口火を切る。本書『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』(亜紀書房)は、ブレイディ氏に加えて、松尾匡・立命館大学経済学部教授(理論経済学)、北田暁大・東京大学大学院情報学環教授(社会学)の鼎談をまとめたもの。安倍一強政治がつづくいまこそ、左派の最優先課題は「経済」であると主張する。
ブレイディ氏は続ける。「日本の左派の最大関心事は改憲問題であり、原発問題であり、人権やジェンダー、LGBTなどの多様性と差別の問題だ」「経済はデモクラシーとは関係のない事柄だと思われている」
北田氏は、「経済的に豊かな時代に育った年長世代の左派の間では、なぜか相も変わらず脱成長論が人気」と受ける。ブレイディ氏によると、欧州では左派ほど「健全な成長」の必要性を唱えるのが普通だという。松尾氏も「労働者の物質的な豊かさを追求する、というのは左翼の十分条件ではないにしろ、必要条件」とつづける。
なぜ日本では経済が文化に回収されてしまったのか。北田氏は消費社会論を中心に、「社会学的な観点から経済を見る」というスタイルがかっこいいと定着したため、とみる。固有名詞を挙げてスター社会学者らへの厳しい批判も。
ブレイディ氏からはさらに、英国のEU離脱、ブレグジットは飯が食えないという労働者階級の不満からきた、保守党の緊縮政治が背景にあると説明する。「経済にデモクラシーを」を掲げ、積極的な金融緩和と公共投資を求める反緊縮運動の流れが欧州左派の主流だというのだ。
これって「アベノミクスじゃん」。まさに日本では右派とみられている安倍政権の政策そのものであることが日本での事態をややこしくしている。
経済学者の松尾氏は「消費増税反対・財政緊縮反対で安倍政権に勝てる」と経済についてのスタンスの大転換を日本の左派に訴える。
少なからず、自分が左派やリベラルと自認している人にぜひ読んでほしい。経済について語っているつもりで実は何も語っていなかったことを。成長を放棄した国で「豊かな心」など育つはずがないことを知るだろう。
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