腰痛は健康問題のなかでも特に関心が高いものの一つに違いない。日本人の約2800万人が悩んでいるというのだから。その原因はさまざまに取りざたされてきたが、この数年でにわかに注目を集めているのが「足」だ。
たとえば、NHKの人気情報番組「ためしてガッテン」は7月18日に「10万人調査で判明!腰痛・ひざ痛劇的改善のカギは足形にあり!?」というテーマで放送。足の指が地面に着かない「浮き指」の人が増え、これが腰痛やひざの痛みなどにつながっている可能性を指摘した。
本書『そんなことをしていたらあなたの腰痛なおりません!』(南雲堂)では、監修を務めた動作解析研究家の夏嶋隆さんが、自分の診療所などでの経験から「腰痛の要因でいちばん多いのは足からくるもの。足(くるぶしから先)の変形などが原因となり、歩き方、立ち方がおかしくなると、やがて膝や股関節、そして骨盤に影響が出る。そこから腰の痛みとなって現れる。これが、腰痛全体の6~7割を占めていると感じている」と述べており、紙数の多くを歩き方や靴の選び方に割いている。
監修者の夏嶋さんは、バレーボール実業団チームの指導者を経て東洋護健術を研究。その後、カイロプラクティック(手技療法)の診療所を開設しトレーナーとしても活動しており、数多くのアスリートの再生やパフォーマンスの向上に貢献し高い評価を得ている。「浮き指」などの足の問題が腰痛の原因である可能性については、監修者を務め4年前に刊行された書籍でも指摘していた。
本書では「浮き指」などの用語は使われていないが、現代人は長い時間靴を履くようになってから足が過保護になり、このことが身体の退化を招き腰痛などの症状の原因になっていると指摘。家のなかでは段差がなくなり畳が消えるなどバリアフリー化が進み足への抵抗が減ってきて退化を加速する。どこでも平らなフローリングかカーペットとなって、だれもが小さいころからペタペタ歩き偏平足に育ってしまい、衝撃吸収など本来備わっている機能が十分発揮されなくなってその影響が腰に及ぶ。
「昔の日本家屋には畳の縁や敷居があり、真っ平らではなかったのが足のためには良かった。屋外でも、底の硬くない草鞋や草履でデコボコの地面を歩いていた。そういう足を正常に進化・機能させていた要素が現代日本では消えてしまった。足を過保護にしたがゆえに、人体の退化をまねいている」――。この点からは腰痛はまさに現代病。子どもの健康のためには裸足で過ごさせるのがよいなどといわれるが、本書によると、現代の家屋では発育のためには良くないらしい。
本書で引用されている厚生労働省と東京大学医学部付属病院などが行った調査の結果によると、日本人の2770万人に腰痛があり、40~60代では約4割が悩みを持つという。同調査は1か月間に限ったもので、本書では「実際の腰痛経験者もっと多いはず」と推測している。
それもそのはずで、現代は腰痛の原因となる、現代ならではことがヤマほどある。街かどで、電車のなかで、だれもが手にしているスマートフォンもその一つ。片手で持ち、もう一方の手で画面を操作するときに、持っている方の手は、手首を甲側に折る(背屈させる)ようにする人が多いと思われるが、クセになると手首の甲側にしわがついてくるようになり、これが腰痛のサインなのだという。
手首を背屈にすると、腕から肩まで筋肉が緊張し足の動きに影響をきたす。相当の期間をその形で過ごしていると、歩き方のバランスを崩し骨盤をゆがませることになって腰痛に見舞われる。
腰痛を抑える最善策は、歩きスマホをやめることかも。
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